第96回日本産業衛生学会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム 19 高年齢労働者の労働適応能力と機能評価

2023年5月12日(金) 13:45 〜 15:45 第4会場 (ライトキューブ宇都宮 2F 大会議室201)

座長: 能川 和浩(千葉大学大学院医学研究院環境労働衛生学), 山瀧 一(一般財団法人君津健康センター 産業保健部)

【医(専)、看】

年齢を重ねて働く人は増え続けている。令和3年の総務省労働力調査によると、55歳~64歳、65歳以上の就業者はそれぞれ1170万人、912万人で、全就業者の17.5%、13.7%を占めている。特に、65歳以上の就業者の増加が顕著となっており、5年で807万人(平成29年)から912万人(令和3年)へと増加している。国の施策としては、令和3年に高年齢者雇用安定法の改正法が施行され、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するための努力義務が事業者に求められるようになった。このような背景のもと、今後ますます高年齢労働者が増加することが予想されている。

高年齢労働者の就労に関して課題となっているのが労働災害の増加である。令和3年の労働災害による休業4日以上の死傷者のうち、60歳以上の労働者の占める割合は25.7%に及んでいる。労働災害の中で、最も発生件数が多いのが転倒災害である。令和3年の転倒災害の発生件数は33,672件と新型コロナウイルス感染症を除く労働災害全体の25.8%を占めているが、このうち60.6% が休業見込み期間1ヶ月以上となっている(令和3年労働災害発生状況の分析等 厚労省)。

高年齢労働者の労働災害には、加齢に伴う身体機能・認知機能の低下が大きく影響を与えている。そのため、高年齢労働者の労働災害防止のためには、高齢者の特性に基づいたリスク低減対策が求められている。令和2年、厚生労働省は「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」を策定した。エイジフレンドリーガイドラインでは事業者の行うべきこととして、1)安全衛生管理体制の確立(方針表明と体制整備、リスクアセスメント)、2) 職場環境の改善(設備・装置の導入や照度確保などハード面の対応、勤務形態等の作業管理などソフト面の対策)、3) 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握、4) その状況に応じた対応(健康や体力の状況を踏まえた措置、状況に応じた業務の提供、健康保持増進策)、および5) 安全衛生教育(高年齢労働者、管理監督者に対して)を挙げている。

本シンポジウムでは、高年齢労働者の健康や体力の状況の把握と職場での対応に焦点をあて、身体機能・認知機能だけでなく、キャリアや学びの観点も含めて、労働適応能力を高めるにはどのようにすべきか、議論を深めたいと考えている。