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シンポジウム
シンポジウム 20 政策法制度委員会シンポジウム:化学物質の自律管理へ向けて、それぞれの産業保健スタッフの果たすべき役割
Fri. May 12, 2023 9:00 AM - 11:00 AM 第5会場 (ライトキューブ宇都宮 2F 大会議室202)
座長: 橋本 晴男(橋本安全衛生コンサルタントオフィス), 堀 愛(筑波大学医学医療系国際社会医学研究室)
【医(専)、看】
「職場における化学物質等の管理の在り方に関する検討会報告書」が2021年7月に出され、従来,法令遵守形であった化学物質管理を自律管理に転換する方向が示された。これは今後の産業保健行政全体に大きな影響を与える可能性がある大転換である。2022年には関連の省令改正が公布され着々と実践に移されている。
従来は,特別規則対象物質(約110)に関して作業環境測定、健康診断などの義務事項を細かく定める「ハザードベース」の管理といえた。今後は,国が広範な物質(約2,900)に関しリスクアセスメント(以下,RAという)を義務化し,うち約950物質について労働者のばく露を国の定める「濃度基準値」以下とするよう事業主が自ら実施する「リスクベース」の管理となる。
以上により,産業保健スタッフの役割が大きく変化し,対応できる人材が必要になる。産業衛生技術職については,事業場を指導する立場として化学物資管理専門家、および作業環境管理専門家が新たに位置づけられる。これらは、オキュペイショナルハイジニスト,労働衛生コンサルタント(労働衛生工学)などが該当する。また事業場毎に,第一線でRAを行う化学物質管理者の配備が必要になる。さらに,RAの一環として個人ばく露測定等を行う作業環境測定士等の重要性も今まで以上に高まる。
一方,医療職(産業医,産業保健看護職など)には,RAの結果に応じ事業主の判断で行う特殊健康診断の支援が重要な役割となる。まず,技術職との情報交換を密にし,RAや測定の結果を理解する必要が生ずる。次の課題として健康診断の項目の設定,および実施要否の判断がある。前者は厚生労働省からガイドラインが出るとの情報があり,後者は,基本的な判断基準について産衛学会内で検討する方向と聞く。この基準が決まれば、RAに基づいて技術職が特殊健診対象候補者を選別,提案し,これを産業医が確認,決定して健診するという新たな役割分担の流れができるだろう。産業歯科保健分野に関しては,酸などに関する歯科特殊検診の取扱い,および自律管理の中で歯科に関し何をするかなどが課題と考えられる。
一方で,事業主には法順守一辺倒から経営リスク/ベネフィットにもとづく自律的な安全衛生管理への意識の転換と,新たな管理への実行力が求められる。さらにステークホルダーである国,関連機関,研究機関,学会,大学,職能別団体,業界団体などの今後の動向も重要である。
本フォーラムでは、自律管理に向け各産業保健スタッフが果たすべき役割を確認するとともに,この大転換期を各役割を一度根本から見直す契機とも捉え,大所高所からの見方を含めて議論したい。
慶應大学の大前先生による基調講演ののち,産業衛生技術分野から中原先生,産業医の立場から真鍋先生,産業歯科保健から木下先生,産業保健看護から楠本先生にご講演をいただき、特殊健診について小田先生に指定発言いただく。
大前 和幸1 (1.慶應義塾大学名誉教授)
中原 浩彦1 (1.NAOSH コンサルティング)
真鍋 憲幸1 (1.三菱ケミカルグループ株式会社)
木下 隆二1 (1.木下歯科医院)
楠本 真理1 (1.三井化学株式会社)
小田 清一1 (1.横浜市立大学社会予防医学教室)