第97回日本産業衛生学会

Session information

シンポジウム

シンポジウム 26 科学的エビデンスに基づき振り返る:COVID-19流行下における労働者の働き方と健康

Sat. May 25, 2024 10:40 AM - 12:10 PM 第5会場 (広島国際会議場 B2F コスモス1)

座長: 石丸 知宏(産業医科大学医学部医学概論教室), 金森 悟(帝京大学大学院公衆衛生学研究科)

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、働き方、労働環境、そして労働者の健康に対する認識に大きな変革をもたらした。企業の感染対策は厳格化され、テレワークや在宅勤務が一般化し、働く人々の生活習慣は大幅に変化した。さらに、これらの変化は労働者のメンタルヘルスにも影響を及ぼした。|こうした状況下において、多くの疫学調査が実施され、様々な知見が得られている。例えば、産業医科大学のCORoNaWorkプロジェクトによるインターネットアンケートを用いた全国規模の前向きコホート研究からは、70編以上の論文が発表されている。他の主要な研究機関からも多数の報告がなされているが、これらの研究成果はまだ十分には統合されておらず、結果が断片的に散在している状態にある。アフターコロナにおいて、これらの知見を一元的に整理し、科学的エビデンスに基づいて再評価する必要性が高まっている。|本シンポジウムでは、第一線で活躍する若手・中堅の専門家がCOVID-19流行下における労働者の働き方と健康に関する科学的エビデンスを総括する。はじめに森貴大氏(産業医科大学)が、職場感染対策として出社制限、感染予防措置、職域ワクチン接種の進展など職場で実践された多様な取り組みの成果や企業規模による対策の差異について報告する。次に大河原眞氏(産業医科大学)が、テレワークの健康影響に関して、政府要請による強制的なテレワーク導入が従業員の健康に及ぼす影響や、業務関連要因・個人要因の違いを報告する。続いて久保善子氏(共立女子大学)が、テレワークによる不健康な食生活、運動不足、飲酒量増加、家事・育児負担の性別差、感染予防行動の変化に関する知見を報告する。最後に近野祐介氏(産業医科大学)が、COVID-19が労働者のメンタルヘルスに与えた影響として感染不安、感染予防対策や生活様式の変化に伴うストレス、自粛生活やテレワークによる社会的孤立、アルコール依存の問題に関する知見を報告する。|本シンポジウムでは、これらの報告とその後の議論を通じて、アフターコロナ時代の労働環境の在り方や労働者の健康管理についての理解を深め、新たな研究と実践の方向性を探ることを目指す。多くの方々の参加を期待したい。|