第97回日本産業衛生学会

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産業衛生技術部会専門研修会

産業衛生技術部会専門研修会 自律管理の時代における技術者と技術専門家の倫理-測定等に関して

Thu. May 23, 2024 10:10 AM - 12:10 PM 第3会場 (広島国際会議場 B2F ダリア1)

座長: 橋本 晴男(橋本安全衛生コンサルタントオフィス), 斉藤 宏之(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所)

「自律的な化学物質管理」が本年4月から本格的に施行された。この仕組みの下で事業主には,労働者の安全衛生の確保に向けて正に「自律(自ら律する)」しつつ一層倫理的な行動が求められると共に,事業主を支援する関連の技術者や技術専門家にも同様の倫理観が求められる。一方,日本産業衛生学会では現在,「産業保健専門職の倫理指針(2000年制定)」の改訂を検討している。こういった情勢を背景に本専門研修会を企画した。|産業衛生専門職の倫理の対象範囲は,各専門職の本来業務に関する事項(例:診断,指導,ケア,リスクアセスメント/マネジメント等)をはじめ,研究上の倫理,企業や個人の守秘など幅が広い。ここでは,「測定等に関する技術者の倫理」に焦点を絞る。|従来から,事業主が作業環境測定の測定日に意図的に操業を落とす,または濃度を低く見積もるよう測定者側に(暗に)求める,といった行為を時折耳にすることがあった。これからの自律管理においては事業主に従来以上の遵法と倫理的な行動が求められる。わが国での過去の労働者の健康問題の発生時,例えばアスベスト疾患やトンネルじん肺などでは,国が主な訴訟の対象となり事業主が必ずしも強く制裁されたわけではなかった。自律管理の法令下では,結果責任が基本的に事業主にあるとの解釈ができ,労働者の適切な保護を怠った場合,事業主が大きな社会的制裁を受ける事態が予想される。|事業場の化学物質管理を支える関連の技術者(化学物質管理者,作業環境測定士等)と技術専門家(化学物質管理専門家,作業環境管理専門家等)についても同様である。倫理を逸脱した行為により労働者に健康被害が出た場合,これらの技術者にも責任が及ぶ可能性がある。さらに,特に技術専門家には,事業主を指導・支援する立場として従来の技術者よりも一段階高いレベルの倫理感を持ち,自ら倫理的に行動するとともに,さらに一歩進んで事業主の倫理的行動をウオッチし(緩く)啓蒙・指導する姿勢が求められるであろう。|この研修会ではまず、産業衛生専門家の倫理に精通された堀江正知先生から,技術専門家の倫理の基本に関して基調講演をいただく。次いで,大学の安全衛生管理の経験が豊富な中村剛先生から、作業環境測定において遭遇した倫理的課題や対応等についてお話しいただく。次いで,環境測定企業の技術専門家である飯田裕貴子先生から,特にアスベスト関係の倫理的な課題と企業としての対策等についてお話しいただく。さらに,指定発言者として持田伸幸先生(ENEOS(株))からは、アメリカでの専門コンサルタント(ハイジニスト)のご経験を踏まえ,欧米での技術者倫理の実践や実情を紹介していただく。|測定等における倫理上の問題点をできるだけ具体的に取り上げ,その対処方法と今後の課題・取組み方に関し,フロアでご参加の技術専門家等と共に率直にディスカッションする場としたい。|