第97回日本産業衛生学会

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シンポジウム

シンポジウム 15 企業における両立支援の新たな展開~社内ピアサポーターの効果を考える~

Fri. May 24, 2024 3:50 PM - 5:50 PM 第5会場 (広島国際会議場 B2F コスモス1)

座長: 大津 真弓(合同会社 ひまわり、一般社団法人 CSRプロジェクト), 桜井 なおみ(一般社団法人CSRプロジェクト)

 両立支援には労働者本人と関係者間の連携が重要なのは言うまでもないが、労働者の支援を行う医療機関と企業との連携には未だ多くの課題がある。特にがん治療をしながら働く労働者の場合、がん種・年齢・病期・仕事に対する個人の価値観など様々である。しかも同じ労働者であっても、治療の過程で病状は変化しうるし、病状の変化や治療の副作用の程度に応じて、仕事への考え方も変化する。その変化に応じたタイムリーな支援は、医療従事者や職場の産業保健スタッフのみで担うのは難しいのが現実である。| 一般社団法人CSR( Cancer Survivors Recruiting)プロジェクトは、「がん患者の就労」を考えるプロジェクトである。我々は希望する全てのがん患者にディーセント・ワークを届けるためには、ピアサポーターを増やすことが、解決策の一助となるのではないかと考え、企業内ピアサポーター養成事業(以下本事業)を2020年コロナ禍から開始した。まずは既に企業内がん患者コミュニティを運営する企業5社が集まりWorkCAN’sを結成、ロゴマークを作成したことからスタートしている。| 本シンポジウムではCSRプロジェクト代表理事の桜井より本事業の概要と企業内ピアサポーターの存在意義と価値について説明する。企業内ピアサポーターに求められるコンピテンシーについては、大阪大学大学院人間科学研究科の平井先生により、航空業界で航空機墜落事故のピアサポート活動が組織的に養成されている実例をご紹介いただき、がん患者における企業内ピアサポーターの重要性とその役割 について考察していだだく。尚、本事業の教育プログラムはそれを応用したものである。次に、企業内ピアサポーターの設置を行っている三つの企業から実態報告をしていただく。三菱ケミカルグループでは、本事業の研修に参加された保健師の山本先生より、事務局の一員として社内で展開中のAll WorkCAN’s 活動についてご報告いただく。人事の企業内ピアサポーターとして活動されている、大鵬薬品工業株式会社の三田様からは、治療と仕事の両立支援だけに留まらない、育児・介護なども含めた全ての社員に対応可能な制度設計とその周知法の工夫についてご発表いただく。アフラック生命保険株式会社の専属産業医、金室先生からは、コミュニティ発足時の人事部(健康管理部門含む)支援とその後自主的な活動の場へ変化、社内の両立環境づくりへの寄与に留まらず、社内ビジネス支援活動にまで発展している実情をご発表いただく。最後に両立支援の実務担当者として期待されている医療機関の両立支援コーディネーターからみたピアサポーターの有用性について、労働者健康安全機構中国労災病院の豊田先生よりご発表いただく。| 最後の総合討論では、シンポジスト間での質疑応答に加えて、フロア参加者との質問も受けながら、現状の両立支援の課題と企業内ピアサポーターを活用した両立支援の有用性を検証していきたい。||