第98回日本産業衛生学会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム 12 仙台防災枠組と災害産業保健

2025年5月16日(金) 13:45 〜 15:45 第6会場 (青葉山公園仙台緑彩館 1F 交流体験ホール)

座長: 尾島 俊之(浜松医科大学健康社会医学講座), 栗山 進一(東北大学災害科学国際研究所)

 「仙台防災枠組2015-2030」は、東日本大震災を受けて2015 年に仙台市で開催された第3 回国連防災世界会議においてその成果文書として採択された。2005 年の第2 回会議で採択された「兵庫行動枠組」の後継としての、2030 年までの国際的
な防災の取り組み指針である。仙台防災枠組の特徴として、次の3 点がある。(1) 災害による死亡者の減少など、地球規模の目標を初めて設定している。具体的には、「世界の災害による死者数を大幅に減少する」という目標を筆頭に掲げている。
(2) 防災の主流化、事前の防災投資、復興過程における「より良い復興(Build Back Better)」などの新しい考え方を提示している。レジリエンスのための災害リスク削減のための投資の項において、企業の災害に対するレジリエンスを強化するた
め、関連する官民のステークホルダー間の連携を促進し、支援することが書かれている。(3) 防災・減災での女性や子ども、企業など多様なステークホルダーの役割を強調している。このステークホルダーの役割の項において、企業、専門家団体等
は、事業継続を含む災害リスク管理を、災害リスク情報を考慮した投資により、特に零細・中小企業におけるビジネスモデルや慣行に統合し、従業員や顧客の意識啓発と訓練に従事すること等が書かれている。仙台防災枠組では、企業という言葉
が頻繁に登場し、産業保健との関連は強い。仙台での日本産業衛生学会の開催にあたって、仙台防災枠組に書かれている種々の視点から災害産業保健を深化させるべく、このシンポジウムを企画した。
 1番目に栗山進一氏から「仙台防災枠組と実践すべき巨大災害への備え」として、仙台防災枠組みの概要と進捗、災害による死亡を防ぐために、公衆衛生学の手法を防災に応用し、普段からの行動変容によって防災を進める戦略についてお話を
いただく。
 2番目に澤島智子氏から「企業における災害産業保健と専門職に求められるコンピテンシーからみる平時の備え」として、災害産業保健のこれまでの発展と、産業保健専門職のコンピテンシー、そして鉄道事業者におけるハードとソフトの地
震対策の取り組みについてお話をいただく。
 3番目に濱舘陽子氏から「首都直下地震における保育所看護職向けの災害対策マニュアルと教育プログラムの開発への取り組み」として、働く人を支える重要インフラでもある保育所についての研究成果についてお話をいただく。
 4番目に大類真嗣氏から「産業衛生領域での災害レジリエンスの強化:災害後の生活習慣と職場内のコミュニケーションによる精神保健の保持」として、東日本大震災における福島第一原子力発電所事故による避難区域内において事業継続し
た事業所での健康調査から得られた知見等をお話しいただく。
 最後に、今後の取り組みの重点や、災害大国日本での経験からの世界への発信等について、フロアを交えて意見交換を行いたい。