竹内 研時1,2 (1.東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野, 2.東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンターデータサイエンス部門)
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産業歯科部会前期研修会
産業歯科部会前期研修会 働く人々の全身の健康づくりに寄与できる歯科口腔保健
Thu. May 15, 2025 11:15 AM - 12:15 PM 第5会場 (東北大学百周年記念会館 2F 川内萩ホール)
座長: 安田 恵理子(大阪歯科大学歯学部 口腔衛生学講座), 安藤 栄吾(山形県歯科医師会)
産業保健の場で就労者の健康に寄与する取り組みをする上で、健康日本21(第3次)でも掲げられているように「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」は大きな目標である。これはWHOでの目標でもあるように、世界共通の目標である。そして口腔疾患が全身の疾患に影響を及ぼすことは、数々のデータから新たな知見が周知されて来ており、それが医療費や経済的な問題にも関わっていることも世界共通である。就労者の健康に寄与する取り組みをする上で、こうした広い視点を知ることは、新たな気づきに繋がると期待する。
特に歯に関する欧米等諸外国と日本の意識の違いを、海外に行かれて実感される方もいるかと思う。白い歯で笑顔でコミュニケーションをする文化と、良く言えばつつましく表現を控えたコミュニケーションをする文化という違いといえるだろうか。綺麗な歯列は審美的なだけでなく、セルフケア・プロケア等の口腔機能管理の上で重要であり。またう蝕や歯周病はじめ口臭・顎関節症等によるプレゼンティーズムの問題は、労働生産性にも関わる。また歯・口腔の問題がストレスやひいては心理的な負荷にも繋がることがある。生死に直結しないからと、歯のことは後回しにしがちな日本のオーラルリテラシーを向上していくことは、今後の就労者の健康、ひいては健康寿命の延伸と健康格差の縮小を達成する上で、とても重要なことである。
今回こうしたことから、産業歯科保健を考える上で、世界的視点やデータを基に研究を積み重ねておられる竹内先生に御講演いただき、是非、歯・口腔に関する関心を高めていくきっかけになればと願う。
更に宮城県保健福祉部の歯科医療保健政策担当もされていて行政と取り組んでおられることから、そのデータや疫学的研究等も御教示いただく。ライフコースを通して切れ間の無い歯科健診・歯科保健指導等、歯科が健康の入口としてお役に立てることがある。生活習慣病対策としてのう蝕・歯周病や、オーラルフレイル、摂食嚥下問題、誤嚥性肺炎対策等、リタイア後を見据えた就労世代からの取り組みは超齢社会の日本においては喫緊の課題であり、体制を整えていくことが必要であろう。
それぞれの産業保健現場における就労世代に対する健康づくりを、歯科として具体的にどういったことに取り組んでいくのが良いか、皆様と共に考え、理解を深めていきたい。