第98回日本産業衛生学会

セッション情報

産業医部会フォーラム

産業医部会フォーラム 高齢社会における地域保健・職域保健連携のありかた

2025年5月16日(金) 16:30 〜 18:30 第1会場 (仙台国際センター 展示棟 1F 展示室3)

座長: 各務 竹康(福島県立医科大学 医学部 衛生学・予防医学講座), 深井 恭佑(株式会社リードウェル)

わが国における保健事業は、乳幼児から高齢者まで、様々な制度を根拠に実施されている。働きざかり世代においては、労働安全衛生法、健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律などで、様々な保健事業が制度化されているが、その目的、対象者、実施主体、事業内容などがそれぞれ異なっているため、制度間のつながりが十分とは言い難く、保健事業の継続性が途絶えること、地域全体の健康課題が見えにくいことなどが指摘されてきた。
職域保健においては、労働安全衛生法で従業員の健康診断が義務付けられていることで、大部分の事業所では健康診断が実施されており、産業医等による就業判定、保健指導などが行われる。重大な疾患を放置することは、従業員自身の就業の継続に影響を与えることから、就業中は健康管理がなされているが、退職後地域保健の傘下に移行したのち、それまで受動的に実施してきた健康管理を能動的に実施する必要がある。就労中においても、転職など所属事業所が変更になった場合、同一保険者でも健康の記録が途絶えることもあり、就労中の健康記録も連続性が確保されていない。退職後は、職域保健から地域保健に移行した人のそれまでの健康情報が引き継がれていないため、十分にケアが行き届いていない現状がある。
厚生労働省では平成16年度に地域保健・職域保健連携のガイドラインを作成し、都道府県および二次医療圏における「地域・職域連携推進協議会」の設置を推進してきた。しかしながら、その協議会の内容については地域による差があり、地域職域連携の実態は十分に明らかになっていない。
そこで、今回のフォーラムでは地域保健、職域保健それぞれの立場から今後望まれる連携の在り方について発表を行い、議論したいと思う。すぐに答えの出る問題ではないが、幅広い視点からの活発な議論を期待する。