第98回日本産業衛生学会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム 8 産業保健看護専門家制度10周年記念イベント~制度立ち上げから現在、そして未来へ

2025年5月16日(金) 13:45 〜 15:45 第2会場 (仙台国際センター 展示棟 1F 会議室1+会議室2)

座長: 中谷 淳子(産業医科大学 産業保健学部 産業・地域看護学), 鈴木 雅子(株式会社NTTデータグループ 人事本部 健康推進室)

前理事長挨拶:森 晃爾(産業医科大学)産業生態科学研究所)

指定発言: 五十嵐 千代(東京工科大学 医療保健学部看護学科)

日本産業衛生学会 産業保健看護専門家制度(以下、本制度)は、今年で設立10周年を迎えた。本制度は、産業看護部会(現、産業保健看護部会)が運営していた登録産業看護師制度を日本産業衛生学会の専門家制度として位置づけるために、産業医や産業歯科医なども加わったメンバーで検討を重ね制度設計を行い、2015年に設立された。
現在、日本では労働者の高年齢化や多様化などに伴い職場で対応すべき健康課題は増加かつ複雑化しており、産業保健看護職による支援のニーズは高い。その中において、労働者の健康保持増進という成果を出すためには産業保健看護職の活動の質の担保、向上は極めて重要であり、本制度はその一端をなしていると考えられる。実際、人材育成に本制度を組み込む企業も増えており、制度登録者(本制度の3つのラダーである登録者、専門家、上級専門家の総称)の活用が広がっている。
一方で、2015年の制度開始当時1000人を超えていた制度登録者数は現在約800人となっている。減少した理由として、旧制度からの移行者が定年退職等に伴い登録を継続しなかったことが最も多くはあるが、加えて専門家、上級専門家の資格取得や継続の要件を満たすことが難しいこと、要件を自己管理し申請する仕組みが煩雑であることなどの理由も明らかになった。
これらの課題に対応するため、現在委員会では、ホームページの大幅リニューアル、学会員限りとしての専門家及び上級専門家の名簿公開、マイページ機能、各種申請の電子化、資格要件を緩和した「継続登録者」の新設など、制度の安定運用と登録者の利便性を高めるための取組みをすすめている。制度登録者が安定的に増加して実践能力の高い産業保健看護職が広く活躍することで、産業保健看護職自体の更なる社会的認知や活用が進むことを期待し、今後も継続的に改善を行っていきたい。
本シンポジウムでは10周年を記念して、本制度の更なる発展を目指し、専門家制度の歩みを振り返り、将来の展望について討議する。まず、森晃爾先生からご挨拶をいただき、次に委員長から制度の概要とこれまでの経過について報告する。そして、設立時にご尽力いただいた産業医のお立場から、設立時の振り返りと今後の発展に向けての課題について、また2名の看護職から、本制度を社内教育に取り入れている事例と専門家として活躍している状況をそれぞれご発表いただき、最後に五十嵐千代産業保健看護部会長から本制度の発展に向けた指定発言をいただく。これらのご発表やご発言を基に、産業保健看護職の能力の向上が日本の産業保健活動の水準の向上に大きく寄与することを再認識し、その一翼を担うための本制度のあり方について建設的に議論したい。