西村 泰光1 (1.川崎医科大学衛生学)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム 27 職業性肺疾患を科学する
2025年5月17日(土) 11:15 〜 12:45 第6会場 (青葉山公園仙台緑彩館 1F 交流体験ホール)
座長: 菅沼 成文(高知大学), 大河内 眞也(東北大学大学院医学系研究科産業医学分野)
職業性肺疾患は、吸入曝露が有害物質への曝露の主要な経路であることからも産業保健上の重要な疾患であり続けている。古くは1556年のDe re Metallicaに記載され、我が国でも中世の書物に金山などの労働者に「よろけ」と呼ばれた職業病があり、そのために若くして亡くなっていたことが記述されている。その背景には原因となる粉じんの物性・有害性、体内への侵入によって生じる局所の生体反応、標的臓器の詳細な解剖学的な構造、免疫反応など全身に及ぶ影響などが絡み合って、それぞれの疾患が引き起こされる。
今回、「職業性肺疾患を科学する」というテーマのもと、気鋭の研究者から、多様な職業性肺疾患についての最新の研究内容から御講演を頂く。はじめに、西村泰光先生(川崎医科大学)から、悪性中皮腫の免疫バイオマーカーが免疫チェックポイント阻害薬の治療効果の予測に使えることなど、免疫毒性学からのアプローチから悪性中皮腫の新たな診断法、治療法開発の可能性について講演をいただく。直径5mm以下のプラスチック片であるマイクロプラスチックの肺障害について友永泰介先生(産業医科大学)から、ラットの単回吸入曝露実験に基づくご報告をいただく。職業性肺疾患の中でアクリル酸系ポリマーのように有機粉じんの肺障害はあまり注目されてこなかったが、国内の樹脂等を製造する工場における重篤な肺障害の事例報告以降、重要な課題として研究に取り組まれている西田千夏先生(産業医科大学)から、ラットでの気管内注入実験および吸入曝露実験に基づき、ご報告をいただく。さらに、インジウム肺の初めての報告から20年を経過し、世界唯一の曝露者コホートを追跡されている中野真規子先生にインジウムと発癌について御講演いただく。そして、職業性肺疾患のような吸入性の肺疾患において病変の中心となる呼吸細気管支周辺の二次小葉の中心における病変を再現可能なミニブタを用いた職業性肺疾患モデルについて、山野荘太郎先生(労働安全衛生研究所)にご紹介いただく。
これらの御講演内容に対して、産業医科大学の矢寺教授にコメンテーターとしてご発言いただく。職業性肺疾患への科学的アプローチについて、最新の知見を一同に集めての活発な議論の場となることを期待する。
友永 泰介1 (1.産業医科大学 産業生態科学研究所 呼吸病態学研究室)
西田 千夏1 (1.産業医科大学)
中野 真規子1 (1.独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所)
山野 荘太郎1 (1.独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所)