第49回公益社団法人日本口腔インプラント学会学術大会

セッション情報

モーニングセミナー

モーニングセミナー4
インプラント治療に必要な咬合の基礎知識

2019年9月22日(日) 08:00 〜 08:50 第6会場 (福岡国際会議場 4F 411+412)

座長:松下 恭之(九州大学大学院歯学研究院 口腔機能修復学講座インプラント・義歯補綴学分野)

九州インプラント研究会

 インプラント補綴に与える咬合に関して現在まで様々な考え方が提唱されてきているが,それらは十分な科学的根拠に基づいているものではなく,臨床的な立場からの見解である場合が多い.その中で,2007年5月に日本補綴歯科学会・日本口腔インプラント学会共催シンポジウムにおいて9項目の提言が出されている.主な内容は,インプラント補綴の前に歯列の健全化に努め,インプラントと天然歯との咬合に差をつけることなく全顎的なバランスを考えた咬合接触を与えるように,従来の補綴の基本に準じて補綴を行う.また過度の咬合力が生じる可能性を考慮し,補綴材料の選択やナイトガードの使用などの配慮を行う.そしてメインテナンス時の咬合のチェックを必ず行うというものである.またGrossは2015年に出版した「The Science and Art of Occlusion and Oral Rehabilitation」のなかで,インプラント補綴に与える咬合に関して,単独欠損,臼歯部部分欠損,前歯部部分欠損,無歯顎のそれぞれで具体的な方法を提示している.要約すると,単独欠損でも顎位と咬合干渉に配慮する.臼歯部・前歯部部欠損では,残存歯にガイドがある場合はそれに従い臼歯離開とし,インプラントにガイドを求める場合は,部位や様式に配慮し,傾斜角度は緩やかにする.臼歯と前歯の咬合接触は同調させ,ブラキシズムなどへの対応をする.無歯顎で固定性の上部構造では被蓋は少なく咬頭展開角は大きくし,可撤性の場合は総義歯に準じるという内容である.
 今回は,インプラントに与える咬合の基礎となってきた先人たちの様々な咬合理論を簡単にまとめ,メインテナンス10年を超える長期症例を提示しながら,インプラント治療に考慮すべき基本的な咬合の考え方を解説する.また演者が当学会で数回発表してきた咀嚼運動という機能的な視点から,これらの基準の妥当性に関して考察し,さらにインプラントを含めた補綴治療が患者に与える全身的な効果に関しても言及したいと考える.