The 39th Annual Meeting of Japanese Society of Oral Oncology

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Educational Seminar

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教育セミナー2

Chairman:Ysuyuki Shibuya

[ES2-01] Diagnostic imaging of cervical lymph node metastases in patients with N0 oral squamous cell carcinoma

〇Takafumi Hayashi1 (1.Division of Oral and Maxillofacial Radiology, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences)

【略歴】
1987年 新潟大学歯学部卒業
1987年 新潟大学歯学部助手(歯科放射線学)
1995年 新潟大学歯学部講師(歯科放射線学)
1998年 新潟大学歯学部助教授(歯科放射線学)
2000年 新潟大学大学院医歯学総合研究科助教授(顎顔面放射線学分野)
2002年 新潟大学大学院医歯学総合研究科教授(顎顔面放射線学分野)
資格(専門医等):歯科放射線専門医・指導医 日本口腔科学会認定医・指導医
研究テーマ:歯科診療における超音波診断の普及、画像診断の診療ガイドライン
頸部リンパ節転移は口腔がん症例の予後を左右する要因のひとつであり、その正確な診断は口腔がん診療において極めて重要である。CT・MRI・PET・US(超音波診断)などの画像診断法は、触診で検出し得ないリンパ節転移の描出に有用とされ広く利用されているが、電離放射線被ばくや薬剤の副作用、費用負担等に配慮して合理的に判断する必要がある。臨床的に転移リンパ節を触れる場合には画像での診断精度も高いが、cN0症例に限れば、システマティックレビュー/メタアナリシスによる研究では、診断精度においてCT・MRI・PET・USいずれも大きな相違はなく、感度は52〜66%程度、特異度は78〜93%程度とされており、必ずしも十分ではない。ただ、使用装置や診断基準は多様であり、施設間の差は少なからず影響していることが示唆される。

画像に反映する代表的な病理組織学的所見は転移腫瘍巣における中心壊死であり、程度は様々ではあるが嚢胞状化と角化に大別できる。嚢胞状化は内部が液化した状態であり、相対的に水分が多く造影されないため造影CT・造影MRIやT2強調MRIが敏感に捉えるのに対し、USでは既存のリンパ組織と音響インピーダンスの差が小さいため、注意深く観察しないと見落とす可能性がある。これに対し、角化は既存のリンパ組織と比較し密度が高く音響インピーダンスの差が大きいためUSが鋭敏でその高分解能が発揮されるが、CTやMRIではUSほど明確には捉えられない傾向にある。特にcN0症例では一般に短径1 cm未満のリンパ節が対象となり、mm単位の転移巣の検出が必要となるが、その際の診断基準は文学的な表現となり再現性に劣るためあまり明確ではない。

当施設でも、CTやMRI、PETで検出できなかったリンパ節内の径2〜3 mmの転移巣をUSで描出できていた場合が少なくないが、これらは転移巣が角化等を伴い既存のリンパ組織と密度の差があったためであり、びまん性に広がったり液化主体だったりした場合には、逆にCTやPETで検出できているのにUSがスルーしてしまうこともある。総じて、短径1 cm未満のリンパ節ではUSが勝つ場合が多いが、負ける場合もしばしばあるということになり、USが常勝というわけではない。

本教育講演では、cN0を想定し、特に短径1 cm未満の転移リンパ節におけるCT・MRI・PET・US所見について、病理組織学的視点からretrospectiveに比較検証することで、それぞれの得意・不得意について具体例を示しつつ考察したい。