第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

講演情報

一般演題(eポスター)

PDFポスター » 3.悪性腫瘍・補助療法

3.悪性腫瘍・補助療法

[P03-29] 動注化学療法併用陽子線治療により良好な長期経過が得られた上顎移行上皮癌の1例

〇富永 拓也1,2、高山 香名子1,2、北畠 健司1,2、光藤 健司2 (1.総合南東北病院 放射線治療科 / 南東北がん陽子線治療センター、2.横浜市立大学大学院 医学研究科 顎顔面口腔機能制御学)


ポスターを表示

【緒言】移行上皮癌は泌尿器科領域に発生することが多く頭頸部領域では稀である。今回、上顎洞に生じた移行上皮癌に対して逆行性動注化学療法併用陽子線治療を施行した症例を経験したので報告する。【症例の概要】(症例)69歳女性。(既往歴)高血圧症、糖尿病で内服加療。(主訴)左眼の複視、左頬部の腫脹。(現病歴)左眼の外転、複視を自覚し近医眼科受診。MRI画像検査にて左上顎洞内に腫瘍性病変認めたため、近医耳鼻咽喉科を受診。生検にて上顎洞移行上皮癌(cT4aN1M0、stageⅣA:UICC第8版)の診断となったが、手術を拒否したため陽子線治療を目的に当科紹介となった。初診時、左上顎洞内の腫瘤は眼窩底浸潤を伴い上顎洞前壁を破壊し頬部皮下まで達していた。【経過】腫瘍浸潤範囲縮小目的にFN(5-FU:1000mg/body、NDP:160mg/body)を1コース施行、続けて陽子線治療(74.8Gy(RBE)/34回)と逆行性動注化学療法の併用療法を施行した。動注化学療法は左浅側頭動脈から外頸動脈の顎動脈起始部にカテーテルを留置しCDDP(70mg/body)をweeklyに計6回動注した。治療により原発巣及び頸部リンパ節転移は縮小し、その後7年6ヶ月経過したが再発・転移なく経過良好である。急性期有害事象はgrade2の皮膚炎とgrade3の白血球減少・好中球数減少、晩期有害事象はgrade3の白内障と視力低下を認めた(CTCAE.ver5.0)。【結語】上顎洞原発移行上皮癌に対する逆行性動注化学療法併用陽子線治療の治療効果は良好であった。6年後に患側の視力障害を生じており、長期の経過観察が重要と考えられた。