第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

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5.悪性腫瘍・病理

[P05-03] 口腔擦過細胞診におけるmicronucleusの頻度の検討

〇川村 和弘1、阿部 史佳1、河野 憲司1 (1.大分大学 医学部 歯科口腔外科)


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【目的】遺伝子損傷の指標の一つとされるmicronucleus(MN)は、DNAに生じた切断が修復されずに残るために生じる細胞核の断片である。 今回口腔擦過細胞診検体に対してMN頻度を測定し、口腔粘膜病変におけるその有用性について検討することを目的とした。
【方法】2016年から2020年の間に大分大学医学部歯科口腔外科で治療を行い、最終病理診断で異型のない過角化症(Keratosis)、上皮性異形成(OED)、扁平上皮癌(Sq.C.C.)の診断を得た、それぞれ5例ずつ、計15例を対象とした。口腔細胞診の判定はNILM、LSIL、HSIL、SCCの4段階とした。MN頻度は、Tolbertらの判定基準を参考とした。電子カルテより患者の性別、年齢、喫煙歴の有無を抽出し、またHE標本から上皮性異形成であれば異型度、扁平上皮癌であれば分化度を判定した。
【結果】男女比、年齢はMN頻度と有意差はなかった。喫煙指数とMN頻度との間に正の相関を認めた(r=0.617)。Keratosis、OED、Sq.C.C.の順にMN頻度が増加し、KeratosisとSq.C.C.間で明らかな有意差を認めた(p=0.005)。OEDの異型度およびSq.C.C.の分化度については異型が強くなるに従い、そして分化が低くなるに従いMN頻度の増加傾向が示唆された。またNILMと判定した症例のなかで最終病理診断がOEDやSq.C.C.と診断された症例はKeratosisと診断された症例よりMN頻度が多い傾向であった。
【考察】最終病理診断とMN頻度において関連性を認め、特に異型がないと判定されたNILMにおいてMN頻度を測定することで悪性の可能性を示唆することができるため、有用であるといえる。