第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

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一般演題(eポスター)

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6.悪性腫瘍・緩和ケア・リハビリ

[P06-04] 自然消退した進行上顎歯肉癌の1例

〇竹下 彰範1,2、内橋 俊大3,4、上田 貴史5、鵜澤 成一1 (1.大阪大学大学院 歯学研究科 顎口腔病因病態制御学講座 口腔外科学第二教室、2.医療法人宝生会 PL病院 歯科口腔外科、3.大阪大学大学院 歯学研究科 顎口腔疾患制御学講座 口腔外科学第一教室、4.大阪大学 医学部附属病院 歯科治療室、5.堺市立総合医療センター 歯科口腔外科)


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悪性腫瘍の自然退縮は極めてまれな現象である.過去の報告では,腎がん,悪性黒色腫,神経芽腫,血液腫瘍などが多くを占めているが歯肉癌の自然退縮は過去に報告がない. 今回われわれは, 左側上顎歯肉癌の自然退縮を経験したので報告する.患者は89歳女性,左側上顎歯肉に腫瘤を指摘され当科を受診された.初診時、左側上顎歯肉(⎿3~⎿7相当部)に45×30mm大の外向性の腫瘍を認め,画像検査では左側上顎臼歯部の骨破壊像を認めた.SCC抗原は12.7ng/mlと上昇しており,細胞診,病理組織検査にて扁平上皮癌と診断(T4aN0M0:StageⅣA)した.病変の範囲からは局所切除は可能であるが,既往歴として再生不良性貧血,血小板減少性紫斑病,慢性腎不全があり,高齢かつADLの低下もあることから根治治療の適応はなく緩和治療の方針とした.その後,腫瘍増大に伴い疼痛の増悪を認め,疼痛コントロールを行った後,緩和治療のため転院となった.しかし,2か月後には腫瘍が消失したと当科を受診された.腫瘍は肉眼的には消失しており,QOLも改善していた.画像上も腫瘍は認めず,また骨破壊を認めた部分も骨の新生を認め,SCC抗原は1.6ng/mlと正常化していた.悪性腫瘍の自然退縮は非常に興味深い現象であるが機序は不明である.その機序を解明することは新たな癌治療への手がかりを与える可能性があり,同様の症例の集積が望まれる.