第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

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9.悪性腫瘍・ゲノム

[P09-10] 口腔内多発性腫瘤から診断されたCowden症候群の1例

〇金 裕純1,2、八木原 一博1、炭野 淳1,2、石井 純一1、桂野 美貴1、柴田 真里1,2、原口 美穂子1、柳下 寿郎3、石川 文隆3 (1.埼玉県立がんセンター 口腔外科、2.東京医科歯科大学大学院 顎顔面外科学分野、3.埼玉県立がんセンター 病理診断科)


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【緒言】Cowden症候群は、1963年にLloydらによって報告された常染色体優性遺伝性疾患である。特徴的な皮膚粘膜病変や全身臓器に過誤腫性病変を合併し、経年的に甲状腺や乳腺などの悪性腫瘍の発生率が上がることが知られている。原因遺伝子としてphosphatase and tensin homologue deleted on chromosome 10(PTEN)遺伝子変異を認める。今回われわれは、頬粘膜に生じた多発性小腫瘤からCowden症候群と診断した1例を経験したので報告する。

【症例の概要】患者は46歳男性で、両側頬粘膜の多発性小腫瘤の精査を目的に、某口腔外科より当科紹介となった。初診時、両側頬粘膜に5 mm程度の乳頭状腫瘤を多数認め、誤咬以外に明らかな自覚症状はなかった。顔面皮膚に丘疹は認めなかったが、左鼻翼部の疣贅を切除した既往があった。予防診断科に対診したところCowden症候群が疑われ、上部消化管内視鏡検査を実施した。その結果、食道粘膜にCowden症候群に特徴的な多発性顆粒状隆起を認めた。頬粘膜腫瘤は局所麻酔下に切除生検を施行し、線維性ポリープの病理組織学的診断を得た。さらに、生検材料の一部と血液材料による遺伝子解析では、PTEN遺伝子の変異を確認した。総合的に口腔粘膜病変はCowden症候群の随伴症状であり、腫瘍性病変ではなかった。当科初診から1年経過した現在、著変なく定期観察を続けている。

【結語】今回われわれは口腔内の多発性腫瘤精査を契機にCowden症候群の診断に至った、比較的まれな1例を経験した。