第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

講演情報

一般演題(eポスター)

PDFポスター » 10.悪性腫瘍・バイオマーカー

10.悪性腫瘍・バイオマーカー

[P10-04] セツキシマブの長期処理がもたらす舌癌細胞遊走能の抑制はp27Kip1依存性G1アレストとオートファジーを誘導する

〇奥山 紘平1,2、鳴瀬 智史3、柳本 惣市3、土橋 宏輝4、戒田 篤志5、三浦 雅彦5、梅田 正博3 (1.東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 顎口腔外科学分野、2.長崎大学 原爆後障害医療研究所 放射線災害医療学研究分野、3.長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 口腔腫瘍治療学分野、4.鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 顎顔面疾患制御学分野、5.東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 口腔放射線腫瘍学分野)


ポスターを表示

【緒言】EGFRを標的とした分子標的薬セツキシマブ(Cmab)が口腔癌治療に標準的に使用されている.また、その細胞動態に及ぼす分子機構も明らかになってきている。本研究ではCmabの長期処理が腫瘍細胞に及ぼす影響を解明することを目的とした.【方法】細胞周期をリアルタイムに可視化するFucciを導入した舌癌細胞株SAS-Fucci細胞を用いた.タンパク解析にはウェスタンブロット法を使用した.【結果】Cmab処理後の細胞周期動態を解析すると、4~5日という長期間の処理でG1期における細胞周期の停止(G1 arrest)を認めた.赤色蛍光の発現レベルはコントロール群と比較し,有意に増強した.また、それらの細胞の動的解析を行ったところ,細胞遊走能の有意な低下を認め、増殖抑制を認めた.タンパク発現を解析した結果,CmabによるMAPキナーゼ経路の阻害はわずかであった.CmabのEGFRの阻害は明らかであることから、下流のネガティブフィードバックループの切断による下流経路の再活性化が考えられた.さらに,細胞遊走低下による細胞接触ストレスを介したAktおよびmTOR活性の低下を生じ,Skp2の活性低下,p27Kip1の蓄積,オートファジーの発現を認め,これら一連の細胞動態変化がG1 arrest,細胞増殖抑制因子と考えられた.本結果はCmabの長期投与がもたらす細胞動態への影響を考慮した新たな治療戦略策定の一助となることが示唆された.【謝辞】本発表は長崎大学原爆後障害医療研究所放射線災害医療学研究分野鈴木啓司准教授との共同研究である.