第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

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[VS-03] 機能温存と美容・整容に配慮した口腔がん切除手術

〇横尾 聡1 (1.群馬大学大学院 医学系研究科 口腔顎顔面外科学講座・形成外科学講座)

【略歴】
1988 兵庫県立成人病センター(現がんセンター)頭頸部外科研修医
1989 神戸大学大学院医学研究科入学(放射線基礎医学専攻)
1993 New Zealand Middlemore Hospital, Plastic Surgical Department留学
1994神戸大学大学院医学研究科修了(医学博士)鳥取大学医学部附属病院歯科口腔外科研究生
1995 神戸大学医学部附属病院 麻酔科・ICU医員,新潟手の外科研究所 マイクロサージャリー技術研修医
1997 神戸大学医学部附属病院 形成外科医局長
1999 神戸大学医学部附属病院 中央手術部助手,副部長
2002 神戸大学医学部附属病院 歯科口腔外科講師(病棟医長,診療科長補佐)
2008 群馬大学大学院医学系研究科 顎口腔科学分野教授,同医学部附属病院 歯科口腔外科科長
2014 群馬大学医学部附属病院 歯科口腔・顎顔面外科科長(診療科名変更)
2017 4月から大学院再編成により口腔顎顔面外科学講座に講座名変更,形成外科学講座教授併任
2018 特命病院長補佐
現在に至る
患者のQOLや社会的生命の維持を考慮すると、病巣のみを切除し救命のみを期待する手術はすでに過去のものである。顎口腔は食物摂取、咀嚼、嚥下という生命維持に必要な機能の他に、会話や表情、さらには美容、整容性など、他人とのコミュニケーションを掌る領域、すなわち「ヒト」としての社会性を担う重要な領域である。口腔がんの場合、病巣切除により「生物学的生命」は保たれ維持されても、切除後の障害は、失職による経済的困窮、一般社会との隔絶等、「社会的生命の消失」を引き起こす。そのため、口腔がん切除はその切除から始まって、その後の再建手術とリハビリテーションまで、すべての段階で「社会的な生命の回復」、すなわち「障害医学」に立脚した「全人的復権(人間らしく生きるための権利)」を目指して展開されなければならない。手術は切除であれ再建であれ、scienceでありartである。最終的にはsenseがものをいう。科学的データに基づいた切除法はscienceであり、その際の無駄な切開や切除の防止にはsenseが必要である。そして、手術手技ひとつひとつがartでなければならない。いずれにしても、口腔がん手術、すなわち口腔顎顔面領域は切除手術も再建手術も機能性と同時に美容性が要求され、両面の考慮が同時に必要となつ難易度の高い領域である。以上の考え方を基本において、本セッションでは機能温存手術とは無駄な切開や切除をしない手術であり、縮小手術ではないことを強調したい。「がん」切除を理由に美容・整容性をないがしろにする手術、すなわちaesthetic componentを破壊するようなsenseのない手術をする者は「術者失格」である。