[EL01-01] 心不全ガイドラインについて
キーワード:心不全, 薬物治療, ガイドライン
日本小児循環器学会小児心不全薬物治療ガイドラインは、2001年に福岡市立こども病院石川司朗先生を班長として第一版が上梓され、今回が始めての改訂となる。第一版では心臓の収縮障害による心不全と心血管構築異常に由来する心不全/循環不全を明確に区別しようというメッセージが基盤であった。今回の第二版ではいわゆる慢性心不全と急性心不全の治療方針を区別しようというメッセージを込めた。そのためにあえて誤解を恐れず、”血行動態改善薬”と”予後改善薬”という名称を採用した。もちろん血行動態改善薬は予後を改善しないわけではなく、”適切に”使用すれば予後改善に寄与する薬剤であることは論を待たない。しかしながら血行動態の改善が必ずしも長期予後改善に結びつかないことは肝に銘じておく必要がある。もっとも知られている例はCASTスタディであろうが、いわゆる強心薬に関しても血行動態の改善が必ずしも予後の改善につながらないことは多数報告されている。一方、現代の慢性心不全治療に欠かせない薬剤の一つであるベータ遮断薬は心機能を低下させ、最近まで心不全には”禁忌”であった。長期予後と血行動態指標の改善は必ずしも一致しないのである。しかしながら、この長期予後の評価は非常に困難である。一人の患者さんを診ていても、ある治療介入がその予後を改善したのかどうかは必ずしもわからない。予後改善薬は多数例によるランダム化比較試験あるいはそれを集めて解析したメタアナリシスによって検討されるが、小児におけるそのようなデータは非常に少ない。第一版の序文でlogically evidencedであればデータとして採用する旨が記載されているが、将来的には小児においてもデータが蓄積され、evidence basedな薬物療法が行われることを期待したい。