第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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教育講演

教育講演3
HCM/HOCMの治療

Fri. Jul 17, 2015 9:50 AM - 10:20 AM 第3会場 (1F ペガサス C)

座長:小野 安生 (静岡県立こども病院)

EL03

[EL03-01] 肥大型心筋症の新しいガイドラインと中隔縮小治療

高山 守正 (日本心臓血圧研究振興会 / 榊原記念病院 循環器)

肥大型心筋症は臨床の場でしばしば遭遇する疾患であり、心電図検診にても著明な左室肥大を目にする。本症は心筋構造蛋白の遺伝子異常を約70%に認めるとされ、その素因は500人に1人が有するとされ各年齢層に分布する。心エコ-図の進歩により肥大型心筋症の正確な診断が可能となり、さらにMRI遅延造影による心筋障害の評価は突然死危険群の予測など特有な病像の理解が深まる。肥大型心筋症については最近の3年の間に米国、欧州でガイドラインの改訂があり、本邦でも侵襲治療への方針が欧米の指針に沿って整理された。これらの新しい指針で注目すべき点は、大きく2点ある。第1は、従来は個別に示されていた侵襲的治療が、“Septal reduction therapy”(中隔縮小治療)として纏められたことである。中隔縮小治療には、中隔心筋切除術(Myectomy)と経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)が包括され、夫々を適応とすべき条件が示されている。思春期・青年期を中心とする若い世代は外科手術が優先され、そして高年齢層ではMyectomyとPTSMAの有効性は同等と示され、侵襲度の低いPTSMAが実施される。第2には肥大型心筋症センターとしての専門施設の位置づけである。遺伝子診断や高度なレベルの画像解析による病態診断と治療法決定を基礎に、豊富な症例数のMyectomy, PTSMAの経験を持ち、かつ不整脈へのカテーテルアブレーション、ICD等のデバイス治療など多領域を包括したセンター化した診療体制を構築するようにと推奨している。当施設では2007年より薬物治療抵抗性の本症の治療に取り組み、既に200例を超えるPTSMAと50例を超えるMyectomyのシリーズを有する。この中から、特に若年者への治療に注目を置き、最新のガイドラインの解説を加えながら、重症心不全を合併する本症に明るい未来を約束するセンター施設としての取り組みを示す。