[I-O-01] 血管型エーラスダンロス症候群:小児期・青年期での臨床像の検討
キーワード:血管型エーラスダンロス症候群, 動脈解離, 動脈破裂
【背景】血管型エーラスダンロス症候群は、3型コラーゲンの合成障害により全身の結合組織が脆弱化し、動脈解離・破裂、消化管破裂などの重篤な合併症をきたす常染色体優性遺伝病である。合併症の多くは加齢とともに現れ、易出血性・特徴的顔貌・透過性皮膚・小関節過可動などの特徴的臨床所見も小児期には認めないことも多いため、家系的背景のない患者における小児期の診断は難しいことが多い。【目的】血管型エーラスダンロス症候群の小児期・青年期の臨床的特徴を検討する。【方法】当院結合織病外来を受診し遺伝学的に確定診断された血管型エーラスダンロス症候群患者39名(26家系)について、20歳以下での合併症を本人および家族より聴取し後方視的に調査する。【結果】20歳以下であざなどの易出血性を認めた症例は22例(56%)、易出血性以外で治療を有する合併症は12例(31%)16件(動脈解離・破裂4例、消化管穿孔3例、胃出血1例、気胸4例、腱断裂2例、臓器内出血2例)、前期破水などの周産期急性合併症は4例(10%)であった。その他周産期に、肺動脈弁狭窄2例、消化管狭窄2例、内反足1例などの先天異常を認めた。20歳以下の動脈合併症は、大動脈解離2例、内臓動脈破裂1例、くも膜下出血1例であり、うち2例は致死性であった。消化管穿孔はS状結腸2例、胃穿孔1例でいずれも腸瘻形成を必要とした。重症合併症のほとんどは13歳以降の発症であるが、1例では新生児期に胃穿孔を認めた。遺伝子変異型との関連では、ナンセンス変異などの早期停止型変異では、グリシン変異やスプライス変異にくらべ小児期の重症合併症は少なかった。【考察と結論】血管型エーラスダンロス症候群では血管合併症に先行して小児期より何らかの血管外症状を認めることが多い。一方、重症合併症の多くは13歳以降の発症であるため、この時期までには遺伝子診断を含めきちんとした診療体制を構築することが望ましい。