[I-O-23] 左心低形成症候群に対する心臓内幹細胞自家移植療法:第I相臨床試験(TICAP trial)の3年長期成績報告
Keywords:左心低形成症候群, 自己心臓内幹細胞移植, 長期予後
【背景と目的】岡山大学病院では左心低形成症候群に対し自己心臓内幹細胞移植療法の第1相臨床試験(TICAP trial (NCT01273857))を施行し、18ヶ月経過観察での安全性と有効性を世界に先駆け報告した。小児に対する幹細胞移植後の長期の安全性と臨床経過は依然不明な点が多く、移植後3年間にわたる長期成績を報告する。【方法】2011年1月から2012年2月にかけて、左心低形成症候群14症例を対象にcardiosphere由来幹細胞を用いた自家移植療法の臨床試験を実施した。前向き比較試験で、移植群7症例(平均2.1歳)に引き続き、標準外科治療のみの非移植群7症例(1.4歳)を連続登録した。移植群は手術時に採取した右心房組織から心筋幹細胞を分離培養し、手術約1ヶ月後に冠動脈内注入した。【結果】移植7症例3年の観察期間で、心不全入院は認めなかった。画像評価と腫瘍マーカーの測定からも造腫瘍効果も認めなかった。stage II (Glenn手術)で移植を受けた3症例はstage III (Fontan手術)に問題なく到達した。一方で非移植群7症例は移植群と比較し coil塞栓の介入が多く(P=0.002)、さらにstage IIで登録した5名の内1名はstage IIIに移行できず、NYUPHIで評価した心不全scaleは移植群が5.4±0.5、一方非移植群は7.9±2.4であった(P=0.02)。機能改善は3年間に渡り維持され、右室駆出率の改善は移植群が7.2±4.8%に対し、非移植群は2.7±2.2%にとどまっていた(P=0.04)。心機能の改善率は移植時の年齢、体重、移植時の心室機能と負の相関を認めた。(age: r=-0.77, P=0.045; WAZ: r=-0.97, P=0.005; EF: r=-0.88, P=0.008).【結語】左心低形成症候群に対する、経冠動脈的自己幹細胞の注入法は安全で、移植後3年目まで継続的な心機能改善と心不全症状軽減を確認した。移植時の年齢や心機能が移植療法に対する反応の予測因子である可能性があり、現在34症例を対象に第2相ランダム化試験を実施し有効性を検証中である。