[I-O-32] 先天性心疾患の血行動態変化評価:microRNAアレイ解析
キーワード:microRNA, 心肥大, 肺高血圧
【背景】microRNA(miRNA)は遺伝子発現を制御する機能を有するノンコーディングRNAであり、成人循環器領域において、心疾患の病態にmiRNA発現が大きな役割を果たすことが明らかにされつつあり、さらに血中に存在するmiRNAの新規パラメータとしての有用性も期待されている。本研究では心室中隔欠損症の手術前後のmiRNA変化を解析し、先天性心疾患の病態解明におけるmiRNAの有用性と新規バイオマーカーとしての可能性を評価する。【方法】乳児期に手術を予定した心室中隔欠損症患者5例を対象とし、術前と術後3か月の時点でmiRNA解析を行った。血漿から抽出したmiRNAを逆転写して、心血管系に特有とされる96個のmiRNAに関してPCRアレイ解析で発現プロファイリングを行い、手術前後で発現が増強もしくは減弱したmiRNAを明らかにした。【結果】6つのmiRNA(miR16、miR17、miR29b、miR182、miR183、miR451a)は手術前後で有意に増強し(p<0.05)、3つのmiRNA(miR23a、miR98、miR328)は減弱した(p<0.05)。miR328は心筋肥大を反映し、miR29bは心筋の線維化を抑制すると報告されている。これらのmiRNAの手術に伴う発現変化は、左室への慢性的な容量負荷と肺高血圧症例での右室への圧負荷が軽減されたことによる、心室の心筋肥大と線維化の改善を反映していると考えられた。さらに肺高血圧患者においてmiR451aが低値、miR23aが高値となると報告されており、術後のこれらのmiRNAの変化は肺高血圧の改善を反映していると考えられた。【結論】miRNA解析は、先天性心疾患の病態を遺伝子発現調節のレベルで明らかにできる可能性がある。心負荷に伴う心筋肥大・線維化や肺高血圧などの病態を定量的に評価できる可能性もあり、今後より多くの症例でデータを蓄積して検討を進めていく必要がある。