[I-O-39] 小児における人工弁置換術後合併症の検討
キーワード:人工弁, 合併症, 血栓
【目的】小児における、人工弁置換術後に発生する合併症とその危険因子を検討する。【対象・方法】対象は当院で1993年1月から2014年12月までの22年間に、人工弁による大動脈弁置換術(AVR)および体心室房室弁置換術(AVVR)を施行した児。38症例に43件の置換術が施行された。置換術時年齢は4.3±3.8歳。機能的単心室16例, 二心室22例、AVR 10件, AVVR 33件。診療録より後方視的に、置換術後に発生した合併症を検討した(平均観察期間は5.5年間)。さらに、血栓症(血栓弁・脳梗塞)発生の危険因子を検討した。検討項目は、年齢、性別、経皮的酸素飽和度、血液検査項目(PT-INR, BNP, Hb, Ht)、置換部位、人工弁輪径・開口面積とした。データ検討期間は、合併症発生例ではPT-INRを合併症発生前45日間、その他の項目は合併症発生前90日間とし、それぞれを合併症非発生例の置換術後450日間と比較した。【結果】43件のうち11件で人工弁に関連した合併症を認めた(26%)。血栓弁6、脳梗塞3、脳出血1、卵巣出血1例で、合併症を再発・併発する症例は認めなかった。血栓弁は83%の症例で置換術後180日以内に発生していた。血栓症の危険因子の検討では、PT-INRは血栓症例で有意に低値だった(1.99±0.59 vs. 2.54±1.05, p=0.036)。BNPは血栓症例で有意に高値だった(1830±1879 vs. 581±1012 pg/mL, p=0.043)。Hbは血栓症例で有意に低値だった(11.6±2.1 vs. 12.2±2.0 g/dL, p=0.002)。Htは血栓症例で有意に低値だった(35.1±6.8 vs. 38.2±6.2 %, p<0.001)。経皮的酸素飽和度を含め、その他の項目では両群間で有意差を認めなかった。【結論】人工弁置換術後の26%に合併症を認め、血栓弁が最多であった。血栓弁は術後、180日以内の発生が多かった。PT-INR低値やBNP高値が血栓症の危険因子と考えられた。