[I-O-42] 小児心臓手術後縦隔炎の検討
Keywords:縦隔炎, 小児心臓手術, 多変量解析
心臓手術後の縦隔炎の発症頻度は1から3%と報告されている。縦隔炎を発症すると死亡率が有意に高くなるとされ、また在院日数の延長によって医療経済的にも大きなマイナスである。しかし、それにも増して患児本人はもとより家族の精神的苦痛は大きい。感染は予防が重要である。小児心臓手術後の縦隔炎に対する有効な予防策を講じるため縦隔炎発症の影響因子について多変量解析を用いて検討した。【方法】過去8年間に当院において施行した胸骨正中切開下の心臓手術1709例を対象とした。術後2週間以内の死亡例、胸骨切開以外のアプローチ症例は除外した。年齢は中央値7.7か月であった。38例(2.2%)に術後縦隔炎を発症した。縦隔炎発症の影響因子として、1)年齢(新生児)、2)Heterotaxy、3)再手術、4)開心術、5)手術時間、6)術後開胸の有無、6)補助循環の使用を挙げ、これらを説明変数、縦隔炎の発症を目的変数として多重ロジステイック回帰分析を用いて解析した。【結果】再開胸あるいは術後胸骨開放とHeterotaxyが有意な因子であった。オッズ比、p valueはそれぞれ、6.4(2.5~16.5), p=0.0001、3.1(1.4~7.0),p=0.0041であった。この2つの因子を有しない場合の発症率は1.3%であるが、2つのうちどちらかを有した場合には6.8%の発症率となる。【考察】胸骨開放が感染を誘発することは容易に推測できる。胸骨開放時には定期的に洗浄を繰り返すなど菌量の減少に努めるべきであろう。Heterotaxyは感染に弱く縦隔炎についても易感染性があると考えられる。抗生剤の予防投与は執刀時に組織内濃度のピークがくるよう短期間の使用にとどめるのが原則であるが、胸骨開放例やHeterotaxy症例では長期の使用も考慮したい。【まとめ】術後の開胸とHeterotaxyが術後縦隔炎の有意な影響因子であった。MRSAなど抗生剤に耐性を有する創感染が増えており予防の重要性が増している。