[I-O-46] 乳児特発性僧帽弁腱索断裂に対する人工腱索による再建術後の中期的経過
Keywords:僧帽弁腱索断裂, 人工腱索, 乳児
【背景】乳児特発性僧帽弁腱索断裂は生来健康な乳児に突然僧帽弁の腱索断裂が発症し重度な僧帽弁逆流(MR)により急速な呼吸循環不全を来たす疾患であり、早期に外科的治療を要する。当院では人工腱索による再建術を積極的に選択している。【目的】今回我々は2005年から2012年までの8年間に8例の症例(MR群)を経験し、人工腱索による再建術を施行した。人工腱索使用後の当院における中期成績を報告する。【方法】術後(1,3,6か月、1年以降1年毎)に心臓超音波検査を施行しMRの程度、僧帽弁流入速度、僧帽弁輪径/左室長軸比(D1/D2)、乳頭筋起始部から人工腱索を含む僧帽弁尖までの距離(D3)を計測した。さらにD1/D2とD3について、川崎病罹患児67例を正常コントロール群としてMR群と比較し検討した。【結果】MR群の術後経過年数は平均4.2年で全例が生存し、再手術は1例のみで人工弁になった症例はなかった。MRの程度は術前3-4度、術後は徐々に改善傾向で1-2度であった。僧帽弁流入速度は1.5m/s以上が6例であった。D1/D2は経時的に変化なく、体表面積(BSA)と相関関係がない(p=0.37)のに対し、正常群では正の相関を認めた(p=0.03)。一方でD3はBSAとの相関をMR群(p<0.001)、正常群(p<0.001)ともに認めた。【考察】本疾患に対する人工腱索による再建術の中期的経過は良好であった。また、正常群と比して体の成長に伴い乳頭筋がより成長している可能性が推測された。【結論】本疾患に対する手術方法として、成長による障害が懸念される人工腱索による再建術において、乳頭筋の成長が身体の成長とともにadjustして延長することが示唆され、適切な手術法であると考えられた。