[I-O-48] 先天性心疾患(CHD)の発生頻度に関する検討~全出生新生児に対する心エコー検査を通して~
Keywords:先天性心疾患の発生頻度, 先天性心疾患全国サーベイランス, 新生児全例心エコー検査
【背景と目的】CHDの発生頻度は従来0.8~1%とされてきた。しかし胎児エコーの導入や心エコーの普及は発生頻度を大きく変える力を持ち、当学会でも最近の疫学動態を明らかにするべく全国サーベイランスを実施中である。しかし、心房間交通をすべてASDとしてよいか、紹介時に消失しているVSDやPDA、弁逆流シグナル、肺動脈分岐部狭窄などをどう扱うかなど迷うところも多い。このような背景のもと、全出生児に対する心エコーからこのような疑問に対する考え方や妥当な発生頻度を検討した。【対象と方法】2008年1月から2014年12月の7年間に一産婦人科医院で出生した全出生児6184例に心エコー検査を行い、一定の基準で選択した有所見児503例中当科外来を受診した456例(90.7%)を対象とし、最長7年の経過観察を行った。【結果】(1)全出生児に対する有所見児の割合は503/6184=8.1%。(2)503例の内訳は心房間交通(径4mm以上)277例、VSD(1-4)98例、分岐部狭窄52例、弁逆流シグナル(Ar,Mr,Tr)30例、PS(v)10例、2尖弁(含As)10例、PDA6例、TOF5例、COA+COA複合4例、AVSD2例、IAA,DORV各1例、その他であった。(2)心房間交通277例中272例が来院、生後5-7か月時点で閉鎖199例、1mm程度の小短絡が49例であり、これらは聴診・心電図も正常。ASDは22例で6例はその後閉鎖、この時点で抽出可能なASDは手術を行った2例、予定中の2例、VSD合併の1例、心電図・聴診とも所見をもつ2例の合計7例にすぎず。(3)VSD98例中91例が来院したが、6か月時で4型55例中37例が閉鎖しており、この37例は当初から心雑音も聴取できず。【考察】(1)6か月時にASDと認識できる児は7/272例、VSDと認識できる児は54/91例、分岐部狭窄や弁逆流シグナルのほぼ全例、2尖弁中ASを合併しない6例などをCHDとして認識することは困難であった。(2)他の疾患についても個々に検討したところ6か月時点でのCHD発生頻度は90/6184×0.91=1.6%と推測され、妥当な数値と考えられた。