第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

1-17 心血管発生・基礎研究

一般口演-13
心血管発生・基礎研究

2015年7月16日(木) 11:00 〜 11:50 第8会場 (1F シリウス B)

座長:
山岸 敬幸 (慶應義塾大学)
横山 詩子 (横浜市立大学)

I-O-61~I-O-65

[I-O-61] 心臓流出路異常の表現型に関する遺伝子と環境因子の相互作用の検討

土橋 隆俊1,2, 前田 潤1, 石崎 怜奈1, 柴田 映道1, 内田 敬子1,3, 山岸 敬幸1 (1.慶應義塾大学 小児科学教室, 2.東京医療センター 小児科, 3.東京家政学院大学現代生活学部)

キーワード:22q11.2, Tbx1, 総動脈幹症

【背景】22 q 11.2 欠失症候群(以下22q11DS)では、高率に心臓流出路異常(総動脈幹症(以下PTA)など)を合併し、22q11.2の領域にあるTBX1が主要責任遺伝子として報告されている。22q11DSでは、全例にほぼ均一な染色体微細欠失が認められるが、PTAの表現型としては、Van Praagh分類のすべての病型が報告されている。なぜ、均一な遺伝学的異常にもかかわらず、PTAの表現型の差異が発生するかは不明である。私たちは、22q11DSと同様にPTAを認めるTbx1発現低下マウスモデルを樹立し、環境因子として葉酸過剰によるPTAの表現型の変化について解析した。【方法】妊娠母マウスを通常餌と葉酸過剰餌で飼育し、Tbx1発現低下マウス胎仔のPTAの表現型の変化と差異を時間的・空間的に解析した。【結果と考察】母妊娠マウスを通常餌で飼育したTbx1発現低下マウス胎仔のPTAの表現型は、Van Praagh A2型のみだった。Tbx1発現低下マウスでは、野生型と同様に円錐動脈幹が大動脈および肺動脈成分に分化するが、円錐動脈幹隆起の高度低形成により、肺動脈主幹部が形成されず、大動脈と分離しないためにA2型になることが示唆された。葉酸過剰餌を与えられたマウスの胎仔では、肺動脈主幹部が形成されA1型となる表現型が認められた。胎生10.5日の組織切片で、葉酸過剰餌胎仔では通常餌胎仔に比して、円錐動脈幹遠位部の心ゼリー層に多くの間葉系細胞が認められ、より多くの心臓神経堤細胞が流入していることが示唆された。【結語】Tbx1発現低下モデルのPTAの表現型が、環境因子として葉酸を過剰にすることにより変化した。本実験モデルから、葉酸過剰により心臓流出路への心臓神経堤細胞の流入が救済されるメカニズムが推測され、遺伝子と環境因子の相互作用により心疾患の表現型が決定されることが示唆された。