[I-O-62] 先天性心疾患(CHD)モデルを用いた虚血再灌流障害(I/R injury)と過酸化脂質(LPO)の関連
キーワード:preconditioning, 過酸化脂質, ROS
【背景】CHD術後I/R injuryの原因に活性酸素(ROS)の関与が指摘されている一方で、ROSによる心保護作用も指摘されておりROSの二面性は未だ明らかでない。ROSの標的となる細胞膜の多価不飽和脂肪酸(PUFA)構成は低酸素などの負荷により変化し、LPO生成にも影響を与えられると考えらえる。今回ラットチアノーゼ型CHDモデルにて孤立心灌流を行い 、I/R injuryとLPOの動態について検討した。【方法】4週SDラットに下行大動脈-下大静脈婁を作成、容量負荷(shunt群;S)とし(controlは開腹のみ;C)、通常大気(normoxia;N)と低酸素(O2;10.5% hypoxia;H)に分けて2週間飼育、計4群を用いた;C/N群(n=6)、C/H群(n=5)、S/N群(n=6)、S/H群(n=7)。順行性孤立心灌流(30分前灌流→30分完全虚血→30分再灌流)を行い、double product(DP=心臓仕事量;収縮期血圧×心拍数)、LPOの指標である4-hydroxyl-2-hexenal(HHE;n-3由来)、hexanoyl-Lysine(HEL;n-6由来)、4-hydroxy-2-nonenal(HNE;n-6由来)を測定した。【結果】DP回復率:C/N群0.20±0.08、C/H群0.82±0.41、S/N群0.73±0.58、S/H群0.94±0.47とS/H群で高い回復率を示した(P<0.05)。Western blotで組織HHEは負荷群で強く、HNEは弱く発現する傾向を認めた。灌流液HEL(nmol/L):C/N群28.7±3.7、C/H群21.9±4.6、S/N群18.5±4.23、S/H群12.8±5.8とS/H群で有意に低かった(p<0.05)。以上より負荷群でn-3由来LPOが増加、n-6由来LPOが減少していた。【考察】PUFAはn-3とn-6に分けられ、n-3の心保護作用が報告されている。また低酸素や容量負荷によるI/R injuryの軽減はpreconditioning効果として報告されている。今回の検討でS/H群における細胞膜構成PUFAのn-3有意性がしpreconditioning効果を誘導し、I/R injuryを軽減させ高い心機能回復を示した可能性がある。