第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

1-17 心血管発生・基礎研究

一般口演-13
心血管発生・基礎研究

2015年7月16日(木) 11:00 〜 11:50 第8会場 (1F シリウス B)

座長:
山岸 敬幸 (慶應義塾大学)
横山 詩子 (横浜市立大学)

I-O-61~I-O-65

[I-O-63] ヒト動脈管における内膜肥厚部の遺伝子プロファイリング

齋藤 純一1,2, 横山 詩子1, 市川 泰広1, 益田 宗孝3, 麻生 俊英4, 石川 義弘1 (1.横浜市立大学医学部 循環制御医学, 2.神奈川県立こども医療センター 新生児科, 3.横浜市立大学医学部 外科治療学, 4.神奈川県立こども医療センター 心臓血管外科)

キーワード:動脈管, 内膜肥厚, 組織プラスミノーゲン活性化因子

【背景】動脈管の解剖学的閉鎖において内膜肥厚の形成は重要な役割を担っているが、これまでヒト動脈管の内膜肥厚部の遺伝子発現の網羅的解析は報告がない。【目的】ヒト動脈管の内膜肥厚部で高発現する遺伝子を調べ、その役割を明らかにする。【方法】左心低形成、大動脈弓離断、大動脈縮窄複合を含む先天性心疾患6名より手術時(中央値は日齢14)に採取した開存動脈管を、内膜肥厚部と中膜に分離し、DNAマイクロアレイを施行した。また、胎生21日目のラットの動脈管と大動脈をフローサイトメトリーを用いて内皮細胞と平滑筋細胞を多く含む細胞群に分離した(合計90匹)。各遺伝子のmRNA発現、蛋白発現はそれぞれ定量PCR、免疫組織染色で検討した。本研究は所属機関倫理委員会の承認を得て行った。【結果】合計6267遺伝子が検出され、このうち6名すべてで内膜肥厚部で中膜より3倍以上高発現している遺伝子が12種類同定された。これら内膜肥厚特異的遺伝子群の中で、さらに大動脈に比べて発現が多い遺伝子をラット組織を用いて絞り込んだ。その結果、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)が、内皮細胞と平滑筋細胞ともに動脈管で大動脈に比べて発現が多いことが明らかとなった(各2.8-fold, 2.0-fold)。抗tPA抗体を用いた免疫組織染色では、ヒトとラット動脈管にともに内膜肥厚部の内皮細胞と平滑筋細胞での強発現が認められた。我々の先行研究よりプロスタグランディンE受容体EP4が平滑筋細胞を刺激して動脈管内膜肥厚形成を亢進させることが示されていたため、ラット動脈管平滑筋細胞をEP4アゴニストで刺激したところ、tPA mRNAが増加した(4.6-fold, n=8, p<0.001)。【結論】ヒト動脈管の網羅的遺伝子解析から、tPAが動脈管内膜肥厚部に特異的に発現することが示された。内皮細胞と平滑筋細胞に作用し、内膜肥厚形成に関与していることが示唆された。