[I-O-64] 新鮮脱細胞心臓弁に対する宿主幹細胞による再細胞化の検討
Keywords:幹細胞, 細胞工学, 脱細胞
背景: 近年、脱細胞化組織を再細胞化することにより、長期的機能維持を期待する人工材料の開発が進んでいる。再細胞化の際には、組織への幹細胞の生着が重要な役割を担うが、その詳細な検討は未だ充分でない。そこで新鮮脱細胞化心臓弁の再細胞化に関し、大動物実験を行い組織学的な検討をしたので報告する。方法:脳死心臓移植時に摘出されたrecipient肺動脈弁を0.5%のデオキシコール酸及び硫酸ドデシルにて脱細胞化し、このヒト脱細胞化心臓弁のECMの構造を電子顕微鏡および免疫染色にて検討した。次に、このヒト新鮮脱細胞化弁をミニブタ肺動脈弁位に移植し、術後の弁機能を心臓超音波検査及びMRIにて評価した(術後1~6ヶ月)。また、術後6ヶ月で4頭を犠牲死とし、組織学的検討を行った。結果: 電子顕微鏡及びcollagen I、collagen III、elastin及びLamininに関する免疫染色での評価では、ECMの構造は、脱細胞化前の状態が維持されていた。移植後の弁機能は、肺動脈弁逆流はmild以下、肺動脈弁狭窄は圧較差25mmHg以下で、全例で弁機能は維持されていた。免疫組織学的検討では、弁組織表層はCD31陽性細胞で覆われ、吻合部の移植組織内にCD31陽性細胞が宿主組織側から侵入している様子が見られた。また、同部位では、vimentin陽性且つcollagen I陽性細胞を認め、これらの細胞ではTGF-β、VEGF及びSDF-1の産生を認めた。電子顕微鏡による評価では、これらの細胞内にmicrofilamentの構造を認め、myofibroblastの存在が示唆された。結論:新鮮脱細胞化心臓弁では、細胞外マトリックスの構造が維持され、移植により宿主幹細胞の生着を認め、長期的な弁機能維持の可能性が示唆された。