[I-P-005] 心内修復術に到達したカントレル五徴症の一胎児診断例
キーワード:カントレル五徴, 両大血管右室起始症, 心臓脱
【はじめに】カントレル五徴症は、臍上正中の腹壁欠損、胸骨下部欠損、横隔膜の前方部欠損、横隔膜部の心外膜欠損、および心奇形を伴う、稀な先天性奇形である。重症度はさまざまで、治療戦略も確立されていない。私どもは、胎児期に診断されたカントレル五徴症に対し、心内修復術に到達し得た男児例を経験した。【症例】母は34歳初産婦。在胎22週に、臍帯ヘルニア、両大血管右室起始症と胎児診断された。在胎38週6日に体重2903 gで出生した。出生直後に自発啼泣したが、陥没呼吸・呼吸促迫がみられたため、生後7分で気管内挿管した。カントレル五徴症と診断し、臍帯ヘルニアに対し、直ちにサイロを造設し、日齢5に外科的修復を行った。日齢15に抜管し、以後はnasal CPAPで呼吸管理を行った。心エコーにて、両大血管右室起始症(大動脈弁下型VSD)、左上大静脈遺残、肺動脈狭窄と診断した。また心臓脱を認め、心尖部が胸郭外に脱出し皮膚のみに覆われている状態であった。吸気時に心臓が胸郭内に還納され、呼気時に脱出する、奇異性の呼吸運動を認めた。啼泣時にチアノーゼが増悪するが、安静時には室内気下で経皮酸素飽和度90%を維持していた。肺動脈狭窄の推定圧較差は25 mmHgで、肺血流は多い状態であったが、心不全徴候はなく、順調な体重増加が得られた。日齢79に体重が4.7 kgとなり、啼泣時のチアノーゼもあることから心内修復術(VSDパッチ閉鎖、肺動脈弁交連切開、右室流出路筋束切除・パッチ拡大)を施行した。胸骨閉鎖は可能だったが、心臓が脱出している胸骨欠損部分の皮膚を閉創できず、二期的に閉創を行った。【考察】カントレル五徴症は予後不良とされるが、心臓脱が軽度で、肺低形成や広範囲の横隔膜欠損による高度の呼吸障害がない場合は、適切な管理により心内修復術に到達できる。本症例では、在宅を目指した呼吸管理の確立と、胸壁再建をいつ行うかが今後の課題であり、文献的考察を含めて報告する。