[I-P-021] 拡張早期左室内圧較差および左室変形評価による、小児がん治療後の心機能低下の早期発見。
キーワード:拡張早期左室内圧較差, 小児がん, 心機能障害
【背景】がん患者に対する様々な抗がん剤や放射線等の治療により、心毒性が生じることは知られている。小児がん治療後の生存者にとって、心毒性は生命予後決定の主要因となっている。従来の心エコー法による心機能評価では早期の心毒性は反映されない。拡張早期の左室内で心基部側と心尖部側間に生じる圧較差(intra ventricular pressure difference:IVPD)は拡張能の鋭敏な指標であり、近年超音波で測定可能となった。しかし小児がん患者に関するデータは存在しない。【目的】拡張早期の左室内圧較差(IVPD)や左室変形の評価による心機能評価方法を用い、小児がん治療群における早期の心毒性による心機能低下の発見を試みる。【方法】対象は小児がんを発症し、化学療法もしくは放射線療法を行い、治療中又は治療後の症例(C群)および正常対照群(N群)。心筋変形の指標として、心筋捻じれ角度(Torsion)捻じれ戻り速度(Untwisting rate:UTR)、円周方向及び縦方向のストレイン(CS及びLS)及びその拡張期変化速度(CSR及びLSR)を用いた。また心尖部四空断面像のカラーMモード画像により、左室のIVPDをオイラーの方程式を用いて測定した。【結果】C群22人、16.7±6.6(8-38)歳およびN群87人、20.4±8.9(7-33)歳。左室駆出率、僧房弁流入E波、E/Aは両群で有意差を認めなかった。TorsionはC群(9.8±3.7度)がN群(13.2±3.9度)に対し有意に低下していたが(p<0.001)、UTR、CS、CSR、LS及びLSRは有意差を示さなかった。IVPDはC群(2.15±0.90mmHg)がN群(2.94±0.61mmHg)よりも有意に低下していた(p<0.001)。N群ではIVPDはTorsion, UTR, CS, CSRと相関したが、C群では相関を示さなかった。【結語】Torsion, UTR, IVPDは小児がん治療後の心毒性の早期発見の指標となり得る。さらにC群の中でもTorsion, UTRが上昇するにも関わらずIVPDが低い症例があり、IVPDが最も鋭敏な心毒性の指標となる可能性がある。