[I-P-031] 肺移植術後の肺動脈吻合部に対するステント拡大術の問題点
キーワード:移植, 肺動脈狭窄, ステント
日本における移植医療の発展により、移植症例に対する小児循環器医の介入も重要となってきている。今回肺移植後に膜型人工肺(ECMO)離脱困難になった症例に対し吻合部ステント拡張術を行い、狭窄の改善が得られたが、カテーテル治療に伴う問題も経験した。 症例はSurfactant Protein-C遺伝子異常による先天性肺胞蛋白症の9歳男児。出生時から酸素、サーファクタント、ステロイド、γグロブリン、ハイドロクロロキン等で治療するも、間質性肺炎や感染を繰り返し、呼吸状態は徐々に悪化した。2014年X月からmask high flowによる40L/minの酸素投与でもSpO2 90%維持がぎりぎりで、肺移植目的に当院転院。転院6日目に両側肺移植(右:祖父中葉、左:母中葉)を施行。術後に人工心肺からの離脱を試みるも、肺動脈圧が上昇しECMOに切り替えICU入室。その後数回にわたりECMO離脱を試みるも、肺動脈圧上昇を認め離脱断念。経過中、左グラフト末梢気管支狭窄を認めステント留置を行うも、血行動態の改善が得られなかった。造影CTにより両側肺動脈吻合部狭窄を認め、協議の上、肺移植後16日目に同部位へのステント留置術を施行。右肺動脈は吻合遠位部で上下に分岐し、MULTI-LINKステントを上枝に2本、下枝に1本、左肺動脈吻合部と狭窄部に1本使用した。右肺動脈吻合部圧較差は17mmHgから8mmHgに、左肺動脈吻合部圧較差は29mmHgから4mmHgと有意に低下し、本来のカテーテル治療の目的は達成されたが、左肺グラフト内肺動脈分枝の一部がステントの圧迫により閉塞した。 肺移植後16日目の術後早期に施行した吻合部ステント留置は、安全かつ有効に施行できた。しかし、治療前の造影CTや治療中の造影所見からステント留置の位置決めを注意深く行ったにも関わらず末梢肺動脈分枝の一部がステントにより圧迫閉塞するという結果となった。このような特殊な症例におけるカテーテル治療の問題点と考察について報告する。