[I-P-033] WPW症候群に対するカテーテルアブレーション後に残存したデルタ波により、完全房室ブロックの合併症がマスクされた1例
キーワード:WPW症候群, 完全房室ブロック, 合併症
【背景】WPW症候群に対するカテーテルアブレーション治療のまれな合併症として房室ブロックがある。デルタ波が残存した場合、房室ブロックの検出は困難である。【症例】18歳男性。5歳時に頻拍発作を自覚し、病院受診しWPW症候群と診断された。頻回に頻拍発作を認めたためカテーテルアブレーションの適応と考え他院に紹介。副伝導路は三尖弁輪後側に同定されたが副伝導路の焼灼に難渋した。副伝導路は最終的に焼灼できず、しかし術後の電気生理学検査では頻拍発作を認めなかったため手技を終了した。以後頻拍発作なく経過したが、18歳時に入浴後アイスクリームを食べていて頻拍発作出現。救急外来を受診し当初発作性上室性頻拍の疑いとされ当科紹介。来院時の心電図から副伝導路による心房細動の高頻度心室応答(いわゆる偽性心室頻拍)と診断された。SPERRI=200msで、有効心拍数は150bpm程度であった。直流通電により心房細動は停止。WPW症候群に対する再アブレーションを希望された。電気生理学検査では三尖弁輪後側に副伝導路を順伝導・逆伝導ともに同定した。さらに電気生理学検査を進めたが副伝導路による心室興奮のためヒス束電位がマスクされており、房室結節の順伝導を確認できなかった。副伝導路の不応期は200msであった。両親に房室結節の伝導障害がある可能性を再度説明した上で副伝導路を焼灼したところ即座に伝導が消失すると同時に房室ブロックが露呈した。2秒以内に通電を停止し5秒後には副伝導路は再発した。術後の副伝導路不応期は術前と同様200msであった。術翌々日に一過性の房室ブロックとなったものの回復。以後は房室ブロックは認めていない。【考察】副伝導路の順伝導が残存している場合、房室ブロックを検出するのはほぼ不可能である。今後の方針としてペースメーカー植え込みを行い副伝導路の焼灼を行うのが、偽性心室頻拍のリスクと比較して妥当と考えられる。