[I-P-046] Group A Streptococcusによる細菌性心外膜炎の一例
Keywords:A群溶連菌, 細菌性心外膜炎, 心嚢ドレナージ
【はじめに】細菌性の急性心外膜炎は稀な疾患である。その中でもGroup A Streptococcus(以下GAS)による急性心外膜炎の報告は海外を含めても少ない。今回我々はGASによる急性細菌性心外膜炎を経験したので文献的考察を併せて報告する。【症例】7歳女児。主訴は胸痛と発熱。入院10日前から胸痛が出現し4日前から発熱も出現した。近医にて対症療法を行うも軽快せず、総合病院小児科にて精査を行ったところ、血液検査で白血球数39600/μl、CRP 29mg/dlと炎症反応の上昇、心エコー検査で心嚢液貯留を認めたため加療目的に同日当院に入院した。呼吸数50~60/分、心拍数140/分、血圧 102/50mmHg、体温38.3度と多呼吸と頻脈を認めた。心エコーでは全周性に心嚢液貯留を認め、IVCは円形で呼吸性変動が乏しく、左室の収縮は保たれていたが拡張障害を伴っており、心タンポナーデが進行していると考えられた。同日緊急心嚢ドレナージ施行、黄色の漿液性成分が吸引された。吸引後は速やかに心拍数が120台まで低下し血圧の上昇も認めた。細菌性心外膜炎を疑いバンコマイシンとセフトリアキソンの2剤でEmpiric therapyを開始した。入院3日目に心嚢液からGASが検出され同菌が起炎菌と判定、抗菌薬はペニシリンGに変更した。抗菌薬投与後は解熱と活気の改善が得られたが胸水貯留が進行し、多呼吸と低酸素血症が遷延したため両側に胸腔ドレナージを施行し胸水の持続吸引を行い、症状は改善した。その後心嚢液、胸水は徐々に減少したためドレーンを抜去し抗菌薬は経静脈的に15日間投与し、アモキシシリンに変更した。その後も再発熱や心嚢液、胸水の再貯留や心機能低下を認めず入院23日に退院した。抗菌薬の加療期間は合計で6週間とした。【考察】鑑別疾患や抗菌薬の投与期間など判断に苦しむ場面が多かった。早期の心嚢ドレナージにより循環動態の改善が得られ、確定診断と起炎菌の同定にも有効であった。