[I-P-047] 心膜切開後症候群に対するトルバプタンの有効性
キーワード:心膜切開後症候群, 心嚢液, トルバプタン
【背景】心膜切開後症候群は心膜切開を施行した心臓手術後の1~50%に発症し、入院期間の長期化、時に心タンポナーデにつながる疾患である。アスピリン、ステロイド、コルヒチンなどが治療に用いられているが、有効性、安全性において一定の見解はない。近年、バソプレシンV2受容体拮抗薬トルバプタンが心不全の治療に用いられているが、心膜切開後症候群に対する有効性の報告は少ない。【方法】2014年1月から2014年12月までに当院で心臓手術を受けた小児のうち、心膜切開後症候群と診断しトルバプタンを投与した患者について、診療録から後方視的に検討した。【結果】1ヵ月~1才2ヵ月(中央値3ヵ月)の4例が、術後5~12日に心膜切開後症候群を発症した。発症前からフロセミド、スピロノラクトンが投与されており、全例に初期治療としてアスピリン、2例にトリクロルメチアジドを投与したが改善せず、全例にトルバプタン0.1mg/kg/日を投与した。1週間以内に心嚢液が消失したものを有効、それ以外を無効とした。2例が有効、2例が無効であった。トルバプタン投与前の血清Na濃度は有効例で130、133mEq/L、無効例で135、141mEq/L、また、投与後の血清Na濃度はそれぞれ、有効例で138、137mEq/L、無効例で133、140mEq/Lであった。2例の有効例では、投与後2、4日で心嚢液が消失した。無効であった1例はトルバプタンを0.3mg/kg/日に増量したが改善せず、心嚢穿刺を施行した。他の無効例はトリクロルメチアジドを投与したところ心嚢液が減少した。入院期間は有効例で29、35日、無効例で30、54日であった。有害事象は認めなかった。【結論】トルバプタンは、低Na血症を伴う心膜切開後症候群の症例に著効し安全に使用できたが、低Na血症を伴わない症例では有効性に乏しかった。今後、更なる症例の蓄積が必要と考えられた。