[I-P-049] 抗β1アドレナリン受容体抗体及び抗ムスカリンM2受容体抗体陽性かつ心抑制性抗体陰性であった新生児発症心不全の2例
キーワード:抗心筋抗体, 心筋症, 新生児
【背景】抗心筋抗体は拡張型心筋症(DCM)等で検出されるがその影響等不明である。出生直後心不全であり、抗β1アドレナリン受容体抗体(抗β1抗体)陽性、抗ムスカリンM2受容体抗体(抗M2抗体)陽性、心抑制性抗体陰性であった2例を報告する。【症例1】在胎36週4日に帝王切開で出生した1772gの男児。出生時呼吸障害で前医に入院し人工呼吸、心機能不良でカテコラミンの投与を受け改善。日齢2に人工呼吸から離脱し日齢30に退院した。日齢46、哺乳力低下、活気なくあえぎ呼吸で前医に再入院し人工呼吸を再開され、左室駆出率(LVEF)40%で当院搬送入院となった。CTR60%、BNP2513.5pg/ml。DOA、DOB、ミルリノン、利尿剤を開始されLVEFは改善した。日齢52、心筋肥厚を認め以後カテコラミン減量中止、日齢56に人工呼吸から離脱したが、日齢70再度心機能が悪化しDCM様となった。DOBとジゴキシン開始も改善なく、日齢91にBNP1836.4pg/mlでカルベジロールの内服を開始した。後ミルリノン、エナラプリルと追加、LVEF20~30%で推移したが生後4ヶ月心機能が悪化し永眠された。【症例2】在胎37週1日、3175gで経腟分娩により出生した男児。チアノーゼを認め当院搬送入院となった。CTR61%、LVEF16%、BNP328.6pg/mlでDOB、ミルリノン、DOA、γグロブリンを投与され人工呼吸を受けた。翌朝LVEFは正常化し、日齢2に人工呼吸、日齢5にDOB、日齢6にDOAから離脱したが軽度の心筋肥厚を認め、カルベジロールの内服を開始した。後心筋肥厚は改善し心機能の悪化を認めていない。【考察】症例1は生後4ヶ月、症例2は日齢8の検体で抗β1抗体陽性、抗M2抗体陽性、心抑制性抗体陰性と判明した。共にカテコラミンで一旦は心機能が改善し、一過性の心筋肥厚を認めた。再燃に対しβブロッカーの早期投与が有効である可能性もある。心抑制性抗体は免疫吸着療法の指標となるが、陰性の場合は不明である。抗心筋抗体の解明には症例の蓄積が必要である。