[I-P-052] 診断、治療に難渋した乳児期発症の大動脈四尖弁による虚血性心筋症の1例
Keywords:大動脈四尖弁, 虚血性心筋症, 冠動脈異常
【背景】大動脈四尖弁は非常に希な異常(0.008∽0.033%)である。大動脈弁逆流が症状発症の原因であることが多く、成人期に診断、治療に至る報告を認める。一方、調べ得た範囲では乳児症例の報告は認めない。今回、乳児期に拡張型心筋症の病態で発症、大動脈四尖弁の診断、治療に至った症例を経験した。【症例】2ヶ月男児。体重増加不良を主訴に前医紹介受診。努力様呼吸、哺乳時の著明な発汗を認め、心臓超音波検査で著明な左室拡大(LVDd 47mm)、心収縮の低下(EF<20%、FS<10%)を認め、精査加療目的に当院紹介受診となった。緊急カテーテル検査にて左冠動脈の低形成、Sellers分類で1度の大動脈弁逆流を認めた。BWG症候群など外科的介入が可能な疾患の可能性は低いと判断した。ICUに入室後、内科管理を開始。原因精査のために施行した経食道心臓超音波検査にて大動脈四尖弁を疑う所見を認めた。第54病日に再度施行したカテーテル検査で、左冠動脈起始部に膜様物による閉塞を認め、選択的造影で左冠動脈が造影された。以後も呼吸器離脱できず、経腸栄養も確立できない状態が続き、内科管理継続が困難と考えられた。外科的介入の方針とし、第67病日に左冠動脈起始部拡大、大動脈弁形成術を施行した。術中所見では大動脈四尖弁で副弁による左冠動脈閉塞を認めた。術後、徐々に心機能の回復が得られ(LVDd26mm,LVEF>50%)、術後36日目に抜管、呼吸器離脱可能となり、現在、利尿剤、ACEI,β遮断薬内服による抗心不全治療を継続し管理中。【結語】大動脈四尖弁による左冠動脈起始部閉塞に伴う乳児期早期に発症の虚血性心筋症に対して外科的介入を行い、良好な結果が得られた。希ではあるが、心筋症の鑑別として念頭に置いておく必要があると考える。