[I-P-053] 先天性左心室瘤3例の報告
キーワード:先天性左心室瘤, 心室性不整脈, 抗血小板療法
【背景】先天性左心室瘤は、非常に稀な疾患である。合併症としては瘤破裂、心不全、不整脈、脳塞栓、胎児水腫、心嚢液貯留などの報告がある。胎児エコーにて診断された無症状例の予後は良好とされているが、長期的経過の報告は少ない。【症例】症例1は21歳女性。7歳時に学校心臓検診で不完全右脚ブロック、心室性期外収縮(PVC)を指摘され、精査にて先天性左心室瘤と診断した。アスピリン内服を開始し、無症状で経過したが、妊娠出産による増悪や突然死のリスクを考え、18歳時に心室瘤縫縮術を施行した。現在、左室収縮能は良好であり、PVCに対し、ビソプロロールを内服している。症例2は13歳男児。胎児期に心室中隔の壁運動の異常を指摘されていた。在胎38週1日、2237gにて出生。出生後よりPVCを認め、心エコー検査にて先天性左心室瘤と診断し、アスピリン内服を開始した。PVCの頻度は徐々に減少し、現在も心尖部に限局した心室瘤を認めるが、左室収縮能は良好である。症例3は1歳男児、胎児期より左心室瘤を指摘されていた。在胎37週6日、3436gにて出生し、心エコー検査にて先天性左心室瘤と診断した。瘤は大きいが、明らかな瘤の拡大傾向を認めない。左室収縮能は保たれているが、左心室の拡大があり、アスピリンに加え、エナラプリル内服を行っている。【考察】先天性左心室瘤は、小児期には無症状で経過することが多いとされているが、成人期以後に、心室性不整脈、心不全、血栓塞栓症を来したとの報告が認められる。無症状例に対しても、不整脈のスクリーニングや抗血小板療法など生涯にわたるフォローアップが望ましいと思われる。心室瘤による心不全には、薬物療法が無効なことが多く、外科的介入が必要となる。しかし、無症状症例に対し、破裂や塞栓を予防するために手術を行った報告は散見するが、治療適応は確立していない。さらなる症例の蓄積が求められる。。