[I-P-055] 右室圧負荷を有する先天性心疾患症例における手術前後のDWSの変化
Keywords:DWS, 左室スティフネス, 右室圧負荷
【背景】左室スティフネスを定量的に評価する指標としてdiastolic wall strain (DWS)が提唱されている。左室M-modeの記録から壁厚の変化を用いて計測される指標であり、スティフネスと負の相関関係にある。我々は前回の本学会で、右室圧負荷を有する先天性心疾患において左室後壁および心室中隔のDWSが低下し、右室圧負荷が左室後壁、心室中隔のスティフネスに影響することを示した。今回、手術により右室圧負荷が軽減することによるDWSの変化を検討した。【目的】DWSを用いて右室圧負荷を有する症例における手術前後の左室後壁および心室中隔のスティフネスを検討する。【方法】対象は右室圧負荷症例(ファロー四徴症、肺動脈弁狭窄、肺動脈絞扼術後)14例である。左室M-modeを用いて左室収縮末期後壁厚(LVPWs)、左室拡張末期後壁厚(LVPWd)、心室中隔収縮末期壁厚(IVSs)、心室中隔拡張末期壁厚(IVSd)を計測し、DWS(後壁)=(LVPWs-LVPWd)/LVPWs、DWS(中隔)=(IVSs-IVSd)/IVSsとして算出した。手術前(0.55±0.38歳)および手術後(2.30±1.15歳)のDWSを算出し、それぞれ正常小児のDWSと比較した。【結果】DWSは後壁、中隔ともに手術前と比べ手術後に有意に上昇した(後壁; 0.34±0.09 vs 0.46±0.06、p=0.003、中隔; 0.15±0.10 vs 0.37±0.09、p＜0.001)。手術前は正常小児と比べ後壁、中隔ともにDWSは有意に低下したが、手術後は後壁、中隔ともに正常小児と有意差を認めなかった。【考察】右室圧負荷により左室後壁および心室中隔のスティフネスは亢進するが、乳児期での右室圧負荷の軽減が左室後壁および心室中隔のスティフネスを可逆的に回復させる可能性が示唆された。