第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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1-11 心不全・心移植

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心不全①

Thu. Jul 16, 2015 4:50 PM - 5:20 PM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:高室 基樹 (北海道立子ども総合医療・療育センター)

I-P-055~I-P-059

[I-P-058] 甲状腺機能亢進症を呈した左心低形成症候群の心不全管理

宮本 辰樹1, 牛ノ濱 大也1, 中村 真1, 佐川 浩一1, 石川 司朗1, 中野 俊秀2, 角 秀秋2 (1.福岡市立こども病院 循環器科, 2.福岡市立こども病院 心臓血管外科)

Keywords:新生児バセドウ病, 心不全, 左心低形成症候群

【背景】妊婦の0.2%がBasedow病を有するが,母体の甲状腺刺激抗体が胎児に移行し,1%に新生児Basedow病を発症する.特に母体が甲状腺摘出術や放射線治療などの治療後では,新生児Basedow病の発症リスクが高い.我々は,甲状腺機能亢進症を呈した左心低形成症候群の症例を経験した.新生児Basedow病に複雑心奇形を合併した報告は稀で,周術期管理を行ったものは極めて貴重と考えられ,これを報告する.【症例】日齢3,女児.母体はBasedow病のため放射線治療を受け,妊娠中は甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン補充と、胎児甲状腺機能亢進に対するヨード内服にて管理された.在胎37週1日に前期破水し,分娩誘導で経膣分娩により出生.児は出生直後から多呼吸,呻吟,頻脈を呈し,酸素を投与されるも改善なく,SpO2低下と哺乳力低下を呈した.日齢1に心雑音と左室心筋肥厚に気づかれ,前医NICUで左心低形成症候群と診断された.新生児Basedow病を発症していたため,チアマゾール・ヨード・β遮断薬を投与された.当院へ転院後,日齢5に両側肺動脈絞扼術を施行.心房間交通が狭小化したため,日齢12に心房中隔裂開術を施行した.甲状腺治療としてチアマゾール・ヨード・β遮断薬を投与し,集中治療管理を行った.日齢39に甲状腺刺激ホルモンが上昇し,遊離サイロキシンが低下した.日齢47にNorwood手術を施行したが,術後1日で気管内吸引を契機に突然心拍数が低下した.蘇生処置を行うも反応せず永眠した.【結語】Basedow病合併妊娠は胎盤を介して甲状腺刺激抗体が胎児へ移行し,胎児の甲状腺機能を亢進させることがある.甲状腺ホルモンが心奇形による心不全を増強し,周術期管理に難渋した.先天性心疾患を合併する場合には,積極的に胎児期から甲状腺の治療を行う必要があると思われる.