[I-P-060] ファロー四徴症術後の肺動脈弁逆流に対する肺動脈弁置換術
Keywords:肺動脈弁置換術, 肺動脈弁逆流, ファロー四徴症
【背景】ファロー四徴症(TOF)術後の肺動脈弁逆流(PR)に対する肺動脈弁置換術(PVR)の至適時期には種々の指標が示されている。当院では右室容積や不整脈・自覚症状・成長障害の有無などから適応を判断し、若年者にも積極的にPVRを施行している。【対象・方法】2007~2014年に肺動脈閉鎖を除くTOF術後PRに対してPVRを施行した29例(男15例)を対象とし、PVR前後における臨床・検査所見の変化を後方視的に検討した。【結果】PVR時の年齢中央値14.3歳(7-23歳)、身長146.4±18.6cm(-0.48±1.9SD)、体重41.3±14.9kg(-0.49±1.4SD)であった。初回開心術(ICR)からの経過期間は12.9±3.9年(6-20年)で、24例に生体弁(19-25mm)、5例にePTFE弁付導管(18-22mm)を用いた。ICR平均年齢1.1±1.0歳、全例が肺動脈弁輪温存不可能例であった。PVR前のNYHAは2例がII度、自覚症状として動悸(2例)と倦怠感(4例)がみられた。安静時心室期外収縮が4例にみられ、QRS幅0.145±0.023msであった。MRIによるRVEDV155.0±28.8ml/m2と拡大、PR率47.5±33.6%であった。PVR後は早期に右室容積が減少し、MRI施行9例ではRVEDV 85.6±10.6ml/m2と縮小した。LVEDV(前75.7±7.6,後77.8±8.3ml/m2:p=0.46)、心拍出量(前2.9±0.3, 後3.1±0.5ml/kg/m2:p=0.76)は有意な変化はなかった。心エコーでのRV/LV径比は0.80±0.16から0.59±0.13(p<0.001)と全例で改善した。PVR後の観察期間2.3±1.8年(0.1-7.1年)で2例が成人医療に移行した。周術期・遠隔期死亡はなく、全例NYHA I度と臨床症状が改善した。QRS幅0.142±0.028ms(p=0.27)、BNP(前24.6±21.7,後27.8±21.2pg/ml: p=0.62)、CTR(前54.2±3.6,後53.2±3.7%: p=0.30)、最高酸素摂取量(前94.8±29.6,後89.8±19.7%N:p=0.55)は有意な変化がみられなかった。【考察】PVRにより右室拡大と自覚症状の改善が得られる一方で一般的な循環動態指標は変化が乏しく、PVR基準を明確にするのは容易でないと考えられる。