[I-P-073] 高齢者心房中隔欠損症、動脈管開存症に対するカテーテル治療 ―心機能の可逆性の差異を、心臓エネルギー効率の観点から検証する―
キーワード:成人先天性心疾患, 高齢者, カテーテル治療
【背景】高齢者心房中隔欠損症(ASD)、動脈管開存症(PDA)に対するカテーテル治療の有用性については報告があるが、心機能の可逆性を心臓エネルギー効率の観点から検証した報告はない。【対象と方法】2013年以降にカテーテル治療を行った成人ASD 21例を、60才以上の高齢者群(n=9, 66.5±4.6才)と60才未満の若年者群(n=12, 35.0±13.1才)の2群に分け、カテーテル治療前,術直後,中期遠隔期(12.5±5.2ヶ月)の各段階における,臨床パラメータ(CTR, BNP, LV-EF)を経時的に比較検討した。同時に、左室収縮能(Ees=平均血圧/LVESV), 後負荷(Ea=収縮期血圧/(LVEDV-LVESV)), エネルギー効率(Ea/Ees、SW/PVA=1/(1+0.5Ea/Ees))についても解析した。さらに、高齢者PDA 2例と比較し、その差異を検討した。【結果】高齢者ASD群、若年者ASD群の各群において、Qp/Qs 3.76±1.87 vs 3.48±1.03, 閉鎖栓のサイズ 22.5±5.7 vs 24.0±5.9mmと有意差はなかった。「治療前→治療直後→遠隔期」の臨床パラメータ(平均値)はそれぞれ、CTR 57.5→53.5→53.0% vs 48.0→50.0→49%、BNP 140→157→97 pg/ml vs 16→20→14 pg/ml、LV-EF 56.2→71.8→65.1% vs 70.3→72.7→72.5%、エネルギー効率Ea/Ees0.83→0.59→0.77 vs 0.56→0.55→0.58と、高齢者ASD群の方が臨床パラメータ、エネルギー効率の改善の程度ともに大きかった。 一方、高齢者PDAの2例においては、術前からエネルギー効率が低下しており、EFや他の臨床パラメータについても術後の改善が乏しいという結果であった(Ea/Ees 1.61→1.94→2.06, EF 55.8→46.8→51.5%)。【考察】高齢者ASDにおいては、術前の左室エネルギー効率が比較的保たれており、カテーテル治療後は若年者以上に臨床パラメータ、心機能が改善し、臨床的メリットも大きい。一方、高齢者PDAでは、エネルギー効率の低下した状態が長期間続いており、治療後も心機能の改善が得られにくいものと考えられた。