[I-P-084] 乳児早期に両方向性Glenn手術を必要とした症例の臨床経過
Keywords:両方向性グレン手術, 単心室, 肺循環
【背景と目的】肺循環の成熟が十分でない可能性のある乳児期早期の両方向性Glenn手術(BDG)の適応決定は慎重に行う必要がある。早期BDG症例の臨床経過と予後について検討した。【対象】2009年1月から5年間に日齢120以下でBDGを実施した16例。疾患:右室型単心室12例(左心低形成症候群HLHS9例)、左室型単心室4例。手術時日齢:中央値100(52-120)、体重:4650g(3100-6000g)、SaO2:80%(75-88%)。【方法】BDG前心臓カテーテル検査、心エコー図の評価、人工呼吸管理期間、NO使用期間、在院日数、周術期合併症、TCPC到達例の検査データについて検討した。【結果】早期BDG実施理由:HLHSの予定手術8例、房室弁逆流AVVR4例、低酸素血症1例、他3例。AVVR程度:なし5例、軽症9例、中等症以上2例。BDG前心臓カテーテル検査評価(13例);平均肺動脈圧:12mmHg(9-18)、RpI:1.05(0.42-3.33)、PAindex:238mm2/m2(98-469)、SVEDV:118%ofN(95-179)、SVEF:56%(44-80)。術後人工呼吸器管理期間:0.5日(0-35)、NO使用期間:6日(1-50)、術後在院日数:37日(11-370)。術後合併症:胸水7例(4例が乳び胸)、敗血症2例、ARDS1例。遠隔期成績:11例がTCPC到達(到達時年齢の中央値2歳6か月)し、2例が待機中。また、BDG takedown症例を3例(1:HLHSで日齢115にNorwood+BDG+BT実施。術後CVP上昇・SpO2低下しtakedown。3歳時にBDG再手術を行いTCPC待機中。2:unbalanced AVSDで高度房室弁逆流・心機能低下に対し日齢114にBDG+房室弁形成+BT実施。術後CVP上昇しtakedown。呼吸器感染症で死亡。3:HLHS、日齢97に3100gでNorwood+BDG実施。敗血症・ARDSを発症しBDG循環が破綻。【考察】乳児期早期にBDGを実施した症例の81%がFontan型手術の適応ととなり比較的順調である。しかしながらBDG循環が成立しなかった3例は、BDG前の肺動脈評価が不十分であった可能性がある。乳児期早期BDGの適応を決定するためには術前の正確な肺循環の評価が必要である。