[I-P-100] 肺高血圧を伴うダウン症候群には術後心臓カテーテル検査が必要である
Keywords:ダウン症, 肺高血圧, 心臓カテーテル検査
【背景】経口肺動脈拡張薬の登場により術後軽度から中等度の肺高血圧(PH)症例にも治療の選択肢が広がったが、必ずしも全例で術後心臓カテーテル検査(心カテ)は施行されていない。一方、ダウン症はPH残存例が比較的多いとされる。【目的】ダウン症手術前後の心カテを比較し、術後カテ未施行例の是非を検討する。【方法】後方視的検討。当院受診歴のあるダウン症は476例(男264、女212)。心疾患有病数257(54%)。うち当科でフォローし、評価に耐えうる資料を有する195例(男109 、女86)を対象とした。【結果】最終年齢は0から41歳(中央値6.2歳)。疾患内訳はVSD77例(34%)、ASD52例(23%)、PDA51例(23%)、AVSD35例(15%)、TF15例(7%)など(重複あり)。TGA、TAPVCはなかった。心内修復術105例(54%)のうち術前心カテ89例の肺体血流比(Qp/Qs)は0.4~5.3(平均1.7)、平均肺動脈圧(mPAP)は6~76mmHg(平均27)、肺血管抵抗(Rp)は0.3~11.3単位(平均3.0)であった。術前状態は未手術(N)58例、肺動脈絞扼術後(B)22例、PDA結紮術後3例、短絡術後4例、グレン術後2例であった。mPAPはN群がB群より高かった(30 vs 23, p<0.001)が、Rpに有意差はなかった。平均3年後に48例で術後心カテが行われmPAPは術前に比べ22mmHgに低下していたが(p<0.001)、Rpに有意差はなかった。術前後のmPAP、Rpは正相関を示し(p<0.01)、一次回帰直線はそれぞれy=0.48x+8.08 (R2=0.43)、y=0.51x+1.38 (R2=0.28)であった。これより術前mPAPが25mmHg以上、Rpが3.2単位以上であれば、それぞれ術後20mmHg以上または3単位以上になる可能性が高いと考えられた。術後心カテ未施行40例中mPAPは21例(53%)、Rpは9例(23%)がこれに該当した。【考察】術前PHのダウン症例は術後心臓カテーテル検査を行い、肺動脈拡張療法の適応を検討するべきと考えられた。