[I-P-101] 先天性心疾患を有するダウン症における肺動脈性肺高血圧の経過
Keywords:ダウン症, 肺高血圧, 肺血管抵抗
【背景】ダウン症では高率に肺動脈性肺高血圧を合併し、高流量性肺高血圧において閉塞性肺血管病変の進行が早いことが知られている。しかし、術後急性期以降の肺動脈性肺高血圧の経過はよく知られていない。【目的】当院でフォローされている先天性心疾患を有するダウン症において、術前と術後で肺動脈性肺高血圧の経過を評価する。【方法】対象は31例、平均年齢は7.2歳、根治術症例の術後平均観察期間は7.4年であった。心臓カテーテル検査および超音波検査により、術前・術後の肺血管抵抗(Rp)や肺動脈圧/左心室圧比(PA/LV)を測定しその経過を評価する。【結果】根治術症例ではTOF以外全症例で術前に肺動脈性肺高血圧を認めており、平均PA/LVは術前が82.1%で術後は33.9%と改善していたが、平均Rpは術前3.6Uで術後も3.6Uと変化を認めなかった。術後肺高血圧が残存していた症例は15例であるが、その平均Rpは術前4.2Uから術後3.8U、平均PA/LVは術前90%から術後46.4%と改善を認めた。さらに15例のうち術後肺高血圧治療を導入した症例は6例であり、5例は軽度肺高血圧まで改善し、1例のみ中等度肺高血圧で不変で、治療前後での平均PA/LVは46%から33.7%と改善を認めた。術後肺高血圧治療を行わなかった9例のうち8例は軽度肺高血圧で経過しており、1例は肺高血圧の改善を認めた。最終的に肺高血圧が残存して症例は14例で、うち軽度肺高血圧は13例、中等度肺高血圧は1例であった。【結論】非ダウン症と比べて術後急性期以降に肺動脈性肺高血圧を有する割合は多いと思われるが、術前と術後でRp に変化がなく、高流量性肺高血圧が主体であると考えられた。そのため適切な手術を行い、必要に応じて肺高血圧治療を行えば肺動脈性肺高血圧の進行を防ぐことが可能であると考えられた。