[I-P-105] 出生前グルココルチコイド投与のラット胎仔心筋細胞増殖におけるAkt signaling pathwayの関与と冠動脈新生
Keywords:母体ステロイド, 心筋, Akt
【背景・目的】我々は早産児に対する出生前の母体グルココルチコイド(GC)投与が心臓機能を増強させる事を報告してきた。同時に、GC投与が胎仔心筋断面積を増加させることも確認してきた。しかし心筋断面積の増加は心筋の成長を伴った生理的心肥大に依存するかは不明である。今回我々は心肥大に関与する細胞内シグナルの一つであるAktを介する経路に着目し、その下流の因子GSK3-β、β-catenin、冠動脈新生に関与するVEGFについて検討した。【方法】妊娠ラットにデキサメサゾン(DEX)(0.5~2.0mg/kg)を出生前2日間皮下投与し、妊娠19日目、21日目に帝王切開し早産胎仔(胎仔群)の心臓を摘出した。また自然分娩した日齢1の新生仔(新生仔群)から同様に心臓を摘出した。非投与群には同量のごま油を投与した。各群から摘出した心筋から蛋白を抽出し、Akt、GSK-3β、β-catenin、Ki67、VEGFについて蛋白発現量はウエスタンプロッド法、免疫組織染色法で、mRNAの発現量はRT-PCR法で検討した。【結果・考察】出生前GC投与により胎仔心筋におけるKi67は免疫組織染色で有意に増加した。このことからGC投与による心筋断面積の増加は心筋細胞増殖に起因するものと思われた。またGC投与により胎仔群および新生仔群ではAktが有意に増加した。Aktの下流であるGSK-3βの蛋白およびmRNA発現量は特に19日目の胎仔群で有意に減少し、βcateninが有意に増加した。GC投与により胎仔心筋におけるKi67は免疫組織染色で有意に増加した。この事からGC投与による心筋断面積の増加は心筋細胞増殖に起因するものと思われた。以上の事から心筋細胞増殖はAkt-GSK3β-βcatenin pathwayが関与する可能性が示唆された。最後にVEGFに関しては、妊娠19日目、妊娠21日目のステロイド投与群で蛋白発現量、mRNAの増加傾向を認めた。GC投与による心筋断面積の増加はAkt-GSK3β経路を介して心筋細胞増殖を増加させる生理的な成長を促進していることが考えられた。