[I-P-119] 冠静脈洞閉鎖の5例
Keywords:冠静脈洞閉鎖, 外科的治療, 高静脈圧
【背景】冠静脈洞閉鎖は極めて稀な病態で,術前造影検査で発見される場合を除き術中に偶然発見される.【目的】当院で経験した冠静脈洞閉鎖5例の臨床像を検討.【対象と方法】主診断はASD, VSD,ccTGA 各1例, 及び機能的単心室 2例(TA, DILV).診断時年齢中央値2歳(範囲:2月-73歳).術前造影検査で診断2例,術後造影検査で診断1例,単純心内短絡病変(ASD, VSD)に対する修復術中に偶然発見2例.冠静脈の環流形態はASD合併の1例はThebesian veinsを介し心内腔に還流.TAの1例はdrainage veinとしての冠静脈と無名静脈を繋ぐ左上大静脈(LSVC)とThebesian veinsが存在.残る3例はLSVCのみを介して無名静脈へ還流.【結果】外科治療介入は3例.Double Switch術前造影検査にて診断に至ったccTGAの1例では術後急性期の高静脈圧による冠静脈還流不全を懸念と右室肺動脈導管経路作成のため、同時手術としてLSVC離断後近位断端を機能的右房(解剖学的左房)へ吻合.TAの1例はprimary Fontan術後の低酸素血症から診断,術後5年にLSVC-Thebesian veinを介する逆シャントが増大したためLSVC結紮と冠静脈洞開窓術を施行.DILVの1例は両方向性グレン時に無名静脈流入するLSVCが確認されFontan術前造影検査で診断,Fontan術後高静脈圧による冠静脈還流不全を懸念し,Fontan時にLSVC結紮と冠静脈洞開窓術を施行.全例が生存.術中診断に至り治療介入を行わなかった2例を含め,経過観察期間中央値9年(1-11)において冠還流障害を示唆する所見を認めていない.【結語】冠静脈洞閉鎖は無名静脈へ流入するLSVCがある場合その存在を疑うべきであり,Fontan症例など高静脈圧による冠還流障害が懸念される場合、外科的治療介入が必要である.