[I-P-123] 中毒性表皮壊死症を発症しステロイドパルス療法の適応に苦慮した川崎病冠動脈拡張急性期の乳児例
Keywords:川崎病, 冠動脈病変, 中毒性表皮壊死症
【緒言】中毒性表皮壊死症(TEN)は100万人に1.3人と稀な疾患であり、多臓器障害を起こす最重症型の薬疹である。治療は被疑薬の中止とステロイドパルス療法(IVMP)であるが、川崎病冠動脈病変合併例へはIVMPは施行し難い。今回我々は、川崎病冠動脈拡張(CAL) 急性期に、TENを発症、ECMOを導入した症例を経験したので報告する。【症例】10カ月、男児。体重9.4kg。既往歴・家族歴:特記事項なし。現病歴:第1病日、38度の発熱出現し、第3病日、当院入院となった。入院後経過:体温40.2℃で、Ceftriaxoneを開始したが解熱得られず、第5病日、川崎病と診断した。群馬スコア6点でIVIG+ASA+PSL併用療法で治療を開始した。速やかに解熱したが、第7病日に再熱発し、第8病日にIVIG追加投与を行った。第13病日に膜様落節を認めたが、第14病日に紅斑が出現した。薬疹と考え、ASAからflurbiprofenに変更した。第18病日、紅斑は消失したが、心エコーにて左冠動脈の拡張を認めた為PSLは減量、第20病日に中止した。第23病日、全身の滲出性紅斑と口腔粘膜病変を認めStevens-Johnson症候群と考え、CAL合併症例の為、IVIG投与を行った。しかし第25病日には水疱と表皮剥離、びらんが体表面積約10%を超え、皮膚生検で表皮の壊死性変化を認め、TENと診断した。病状悪化しており、CAL合併していたが、IVMPを施行した。第29病日、呼吸循環維持できずECMO導入した。第34病日、皮膚所見さらに悪化し、循環維持できず死亡した。冠動脈の剖検所見は、全周性内膜肥厚、内弾性板消失傾向、中膜・外膜線維化を認め、川崎病冠動脈病変の変化であったが、IVMPに伴う影響は否定できなかった。【考案】TENの死亡率は19%と高く、適切な治療介入が必要である。今回経験した症例は、川崎病急性期でCAL合併例の為、TENに対するIVMPの施行時期に苦慮し治療介入が遅れた。今後同様の症例には、血漿交換等の集中治療の速やかな導入を検討すべきである。